教育福島0034号(1978年(S53)09月)-009page
二、この題材でねらうもの
ここではボタンつけで学習した製作の基礎技能(糸、布、用具の扱い方、玉結び、玉どめ)をじゅうぶん生かし、自分の手でくふうしながら生活に役立つ小物を作ることができるようにする。この学習を通して、被服製作の基礎としての裁断の仕方、縫い合わせ方を中心に、返し縫い、かがり縫い、一針縫いなどができるようにし、生活に必要な物を進んでくふうして作っていく能力を養っていく。
更に、物を作る喜び、使う喜びを体験させ、製作学習の充実感を実感としてもたせていきたいと考える。
三、児童の実態
○ 小物を作った経験
ある…男3 女14(児童数37)
ない…男18 女2
○ 児童の教材への関心
早く作りたくてしょうがない。おもしろそうだ。わくわくする。今すぐにでも縫いたい。うまくできるかどうか心配だなど、児童は小物作りに大きな期待をもって臨んだ。
四、計画
○計画をたてる 一時間
○製作とまとめ 三時間
「生活に役立つ小物を作ろう」という課題により、表2のような計画を立てた。
次に、計画用紙にでき上がり図、展開図を書き、更に展開図を方眼紙に書き、更に切って組み立て縫合するところを確かめたり修正したりして型紙を作り、必要な布の大きさを決めた。
五、縫い方
○じょうずに縫うには…○美しく縫うには…○ほつれないようにするために…を児童とともに考え、練習布で返し縫い、かがり縫い、糸こきなど基礎練習をしてから実物を縫いあげた。
六、児童の実践記録から(表3参照)
「父へのプレゼント」
磯辺明子
○作る理由
今月は父の誕生日なので、かぎやはんこを入れる小さい袋を作ってプレゼントする。
○作った感想
自分で作ったわりにはよくできたのでとてもうれしい。友達にもほめられてうれしかった。また作ってみたい。おもしろかった。−略−
○使ってみての感想
父にあげたら予想していなかったらしく非常に喜んでくれた。うれしかった。かばんの中にだいじにしまってくれた。母にも作ってあげたい。−略−
以上、実践例は紙面の関係で一名になってしまったが、全員の児童がそれぞれ意欲をもって作りあげた。
七、まとめ
子供たちと考えながらの歩みで、不安もあったが、新しい題材なので新鮮で開拓に似た楽しさがあった。特に子供たち一人一人が真剣に喜びをもって取り組んでくれたことは、この上なくうれしい。これは、
○題材が子供によくあっていたこと
○初めて取り組んだ子供に適度の量であったこと。
○製作経験が少なかったことと、前題材で針、布に慣れ、何かを作りたいと意欲が高揚していたこと。
○教師の取り組みも前むきであった。
などあげられる。反省としては、
○子供たちにまかせっぱなしでなく基礎をしっかりおさえる。
○布はほつれるとか、ずれるなどの感じがわかるようにフェルトでない方が望ましいのではないか。
○自由に製作させるのも一つであるが、鉛筆入れとか、はさみカバーのように題材を決めて学習するのも一つの方法であろう。
児童の作品
児童の作品
表2 児童の計画した小物入れ
計画したもの 男 女 さいふ 9(名) 4(名) 小物入れ 4 2 メモ帳入れ 4 1 鉛筆入れ 1 3 めがね入れ 1 0 はがき入れ 1 1 ティシュペーパー入れ 0 1 はさみ入れ 0 1 プレゼント 1 1 くし入れ 0 1 おまもり袋 0 1
表3 実践記録