教育福島0034号(1978年(S53)09月)-016page
業の焦点化をはからなければならない。特に個人差の多いクラスなどの場合は、行動目標と下位行動目標を明確にさせ、個人差に応じた授業の進め方をする必要があると思われる。
4) 学習の内容については、常に基本的事項と応用的、発展的事項の構造化を考える必要がある。これは前述の3)の行動目標と下位行動目標にも関係するが、換言すれば範例学習において、内容の指導とともに、地域の見方や考え方を学ばせ、その学習方法が次の学習に転移できるように組みたてなければならない。これは地理Bの学習の場合、地域の顕著な話題を引き出して「窓」とし、それを学習の糸口として地域構造を分析していくようにすることである。発表学習の場合も以上のような方法を体得させるように心がけている。自分でやった調査や研究方法が他人の発表を聞くときに転移されるため望ましい学習方法である。
三、授業の反省
昨年度まで発表学習やテレビ視聴を授業に取り入れて実施したが、その効果や問題点をあげると次のようになる。
(一) 発表学習をやることによって、生徒は与えられた一つのテーマ(地域または国)について深く理解し、他の生徒の発表を聞いて、自分の調査、研究した方法と比較して考え、質問するといういわば学習の転移がなされ、あわせて地理学習に対する興味と意欲を高めることができた。発表を聞く側の生徒には毎時「発表学習記録用紙」に発表内容を記録させ、提出させて検閲をしたが、その内容を詳細に検討し、個別指導にまで手がまわらなかったのは残念である。
生徒の中には、発表所要時間(十五〜二十分)をオーバーする者もあり、担当教師の講義やまとめの時間が極端に少なくなることもあった。この点はさらに改善していかなければならない。
(二) 「現代の世界」を視聴することによって、生徒たちは世界各地域のなまの実情にふれ興味をもって学習した。すなわちテレビ教材の速報性と迫真性を生かした地理学習を進めることができた。しかし、視聴による学習内容の定着化には多くの問題点がある。その問題点を少しでも克服するためには視聴のポイントを的確に指示することであろう。
テレビ画面の教材化には多くの時間と労力を必要とする。録画時間の確保、その内容の事前分析などは、多忙な毎日の中では至難の業であることが多い。
以上、発表学習とテレビ視聴を取り入れて実施した授業の反省であるが、生徒側も担当教師もともに、自主性と主体性をもって授業を進めることができたことが大きな成果といえるが、少々欲張った感がないでもない。試験などの成績がクラスによってかなり差がつくこともあった。これは発表学習、視聴覚教材の利用で、学習が興味づけられ、内容が深められたクラスと、逆に興味本位の学習に終始し、学習の内面化、深化が不じゅうぶんなクラスとの差であろう。このような弊害を改善して、今後ともこの学習方法を継続していきたい。
美術
七宝焼工芸の授業
福島県立富岡高等学校教諭 諸井時男
一、はじめに
現代は、金さえ出せばなんでも手に入る時代になってきているが、自分の生活を楽しく豊かにするために、既成品でない手作りの喜びを生徒に味わわせたいものである。手作りによる、学習意欲を高めるための七宝焼教材を考える時、目的・用途をしっかり確かめながら、素地(銅板)の加工や、絵つけ、焼成上の様々なくふうを凝らし、模擬でなく実際に使用できるていねいな仕上げをさせることにより「工芸する」行為を認識させ、焼成における発色の具合いをみる楽しさのみを追う授業に陥らないよう注意しなければならないと思う。
二、授業プロセス
(一) 七宝焼の理論と鑑賞 一時間
(二) デザイン 一時間
(三) 木型の製作 二時間
(四) 打ち出し成形 二時間
(五) 釉盛りと焼成 四〜六時間
(六) 仕上げと反省 二時間
(七) 応用作品の製作
留意点
(一) 七宝焼の理論と鑑賞
1) 七宝焼の発祥と変遷、釉盛りや焼成の技法と種類など必要な参考資料を印刷、配布する。
2) 参考作品は、生徒作品の中から、親近感のあるもので、美しい仕上げをしたものを選び、高度な表現技法を用いた作品は、授業が進み、ある程度生徒が慣れて、機が熟すのを待って示す。
(二)デザイン
1) 用途とフォルム、大きさをじゅうぶん検討させる。またアクセサリーの場合、構造をどうするかを、焼成しない素地のままのサンプルで検討させ、多くのラフスケッチをする。
2) 美しいフォルムが決定したら、後に同じ形態のものを一個以上必要になることを予想し、厚紙に写して型紙を作っておく。
(三)木型の製作
1) 打ち出し用のかなとこが無い場