教育福島0034号(1978年(S53)09月)-023page

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よりなしとげる行動型と他人の労働によってなしとげる行動型とがある。前者を、工作的行動体制、後者を呪術的行動体制*と呼んで区別することもある。3)の項で述べた例は、工作的高次変換にあたる。人をだまして金品を手に入れるいわゆる詐欺やイソップの狼少年の最初の言動などは呪術的高次変換にあたるといえる。

また、調整度の高い、つまり集中性の高い行動種の進行により、文字通りの「寝食を忘れた」研究活動の続行のあげく死に至る場合もありうる。小松左京『日本沈没』における福原教授の死がこれにあたる。

三、終わりに

これまで述べてきたことをまとめると、図1のように表わすことができよう。生きているということは、ある時は集中度の高い方向量の調整による行動種であったり、ある時はよどんで緩衝性の高い行動種の発現、展開であったりなど、放散、沈潜から高い集中性の間をたゆたいつづけることになる。従って、泣くことも、怒りを爆発させることも、時には必要なことであり、だれでも同じ状況で等しい条件におかれると、同じ行動をひき起こす。

教師は、子供のその時々の行動体制の展開が、下図においてどこに位置づけられるものであり、その時どう対処することが生命活動の拡大・充実の方向にむかうことをたすけることになるのかを見てとる目をもたなければならない。つまり、子供が救急行動体制にあるとき、できるだけ早く革生方向への体制づくりを促進させるには、しばらくそっとしておくのがよいのか、外に連れだしてみるのがよいのかなどを判断してすばやく実行に移すわけである。その結果、子供がいっそう激しく泣くことになっても、子供自身には責任はなく、すべての責任は教師が負わなければならない。換言すれば、教師は、子供がどういう経過を経て現在泣いているのかを見きわめなければ、適時、適切、適度な対処のしかたができない。

注 *の用語は、梅津八三 一九七六心理学的行動図重複障害教育研究所研究紀要No.1によった。

補注 前回(七月号)の盲幼児の登校拒否の事例は、譚恵江一九七八

「言語行動の最初期状態にある盲児の行動体制次序変換およびそれに対応する信号系活動の促進、形成についての心理学的輔生工作」

前掲誌No.3によった。

図1 調整度からみた行動体制の位置

図1 調整度からみた行動体制の位置づけ


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