教育福島0034号(1978年(S53)09月)-030page

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研究実践紹介

 

複式授業の改善について

 

金山町立水沼小学校教諭 加藤勝夫

 

一、はじめに

 

複式の授業は、単式の授業にくらべ、研究のデータや成果がどうしても乏しいように感じられる。それは教師の心の奥底に、複式は好ましくないが、条件が整わないためのやむをえない授業の形態という認識があるためではないかと思えてならない。そうした考え方からすると、複式の研究は単式のそれのようなはなばなしさはなく、いかにも地味であって、いわゆる正統派でないように見える。

更に複式の特殊な形態に目を奪われて、とかくすると、研究は方法的なことがらに集中しがちである。「ずらし」や「わたり」が、いつも問題とされるのは、日常、授業者が、そのことで苦労しているからにほかならないからであるが、ほんとうにこれの合理的な解決策を見つけだそうとするなら、複式の特殊性だけを見つめていてはいけないのではないだろうか。方法的な改善ではなく、授業の質を高めるという観点に立った授業の見直しが必要ではないかと思うのである。

 

二、複式授業改善の観点

 

(一) 子供のわかっていく過程を明らかにすること。

そのために教材研究を徹底し、子供が考える道すじを予測する。複式でも単式でも、わかっていく過程にちがいはないという認識を前提として。

(二) 基本的な過程を導入して類型化のできるものを類型化すること。

教材類型に応じ、大まかな学習の順序や段階が考えられるが、自学の能力を高める一方法として取り上げ、こうした力をつけさせるための指導過程の改善に努める。

(三) 上下学年の学習過程望ましい組み合わせ方について探求すること。

二学年を同時に指導することから、直接指導は、その際の指導の効率化のみをねらうだけでなく、後に続く間接指導の時間に有効に結びつくものでなければならない。

更に、間接指導時における子供の自学の方法の探求が必要である。学習形態や、資料の活用など、単に方法というよりは、これは、学習過程の内容の研究そのものである。

 

三、国語科における読解指導の実践例

 

(一) 教材研究の重視

複式指導過程でも児童の理解過程は、単式のそれと変るものではない。このように考えてくると、当然のことながら教材研究が単式と同じく複式授業過程を支える基本的な条件となる。特に単式とくらべ教材研究が二学年にわたることから、一方の学年への偏りや浅い研究にならないようにじゅうぶんな配慮が必要になる。

国語科の場合には、教材文の解釈が特に授業成立の基本的条件であるという考えから、まず複式授業であるという考えを念頭からとり去って、各学年ごとに別個に題材の検討をする。その題材のもつ内容及び技能的価値について調べ、指導内容の洗い出しによって方向を話し合う。これを二学年分完全に独立して進める。

以上のような教材研究によって深まりをねらうものである。

(二) 基本過程の導入

物語文指導の場合のよりどころとして、その基本過程を次のように定め、各学年とも原則としてこれによって指導過程をつくった。

教師側から見れば、基本的指導過程であり、学ぶ側からすれば、基本的学習過程である。

 

〇基本過程

 
文章の概観
 
課題設定
課題追求
主題は握
読後の感想練習

 

○学習のための児童用手引き

感想をもつ
漢字語句調べ
あらすじをつかむ
読みの課題をきめる
課題にそって読む
主題をつかむ
感想文を書く練習

 

教材研究によってわかったことをもとにして、この基本過程にそって題材の指導計画を立てるわけである。ここまでは、なんら単式における教材研究と変わるものではない。あくまでも児童の学習過程を重要視するからである。

(三) 複式指導過程

教材文の解釈、指導の方向の決定、

 

 

 


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