教育福島0034号(1978年(S53)09月)-031page

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目標の設定までは、上下学年ともそれぞれ独立した二本の方向で進められる。単式の指導過程であれば問題ないが、ここから複式授業に特有な研究が必要になってくる。目標達成のためにどのような学習活動をどのような学習形態でさせるか。またそれらを支える条件をどう整備するかという問題である。

1) 題材全体の指導計画

上下両学年とも一人の教師によって指導し、学習を進めさせるとき、学習内容によって、必ず教師と対面して学習を進める必要のあるもの(直接指導)と、そうでなくても学習の進行が可能であるもの(間接指導)とがある。ここに複式指導過程作成上の大きな問題点がある。

当然両学年ともに同時に直接指導を必要とする組み合わせは実施不可能で、はじめからあり得ない。そこで、いわゆる計画や過程の「ずらし」や順序の変更などのくふうが必要となってくる。

たとえば、下の表についてみると1、2、10については、比較的児童の学習活動にまかせられる面(間接指導)が多いが3)〜8)などは、教師が直接対面して指導すべき要素が多いと考えられる。このような場合には、次のような題材全体の計画のずらしが考えられる。

 

○題材の指導計画

かかりすぎて、もう一方の学年が軽視されることがないようにすることである。

 

いずれにしても注意すべきことは、題全体を見通すことがたいせつで、一方の学年に比重がかかりすぎて、もう一方の学年が軽視されることがないようにすることである。

2) 一時間内の組み合わせ

題材全体の組み合わせをくふうしても、一時間中、一方の学年にのみ直接指導をするわけにはいかない。ここでも直接と間接の組み合わせの必要性がある。基本過程によって、一時間の学習過程を次のようにしている。

 

〇一時間の学習過程

A練習学習
B本時目標確認
学習方法確認
Cくわしく調べる
Dまとめ
E次時の予告

 

同題材異程度の学習の場合などには、同時直接指導が可能な面も多いが、題材がちがう場合、直接間接をはっきり区分しなければならない場面がより多くなる。ずらしやわたりの見通しが必要になってくるわけである。

ずらしを考える場合、注意しなければならないことは、児童の思考過程を混乱させないで、いかに組み合わせるかということである。学習者である児童の思考過程に、指導者である教師の都合をそれぞれどのように合わせるかということである。単純に機械的にずらしただけではなんにもならない。たとえば、次のようにずらしたとする。

 

下学年ABCDE
上学年BCDEA
(上学年)DEABC

 

このようにずらすだけでは、意味がない場合が多い。その題材、内容によって一つ一つ具体にそってくふうが必要な面が多いようである。同段階であっても学習活動をかえたり形態、資料などの準備によっても異なってくる。

 

〇一時間内の組み合わせ

〔ねらい−−課題にそって読む。〕

五学年六学年
1) ねらいをつかむ
2) 読み方を知る
3 課題にそって読みとる
4) 話しあい
5 もう一度読んで確かめる
6) まとめ・予告
1) ねらいを確かめ課題にそって読む
2) 読みとったことの話しあい
3 結果のまとめ
4) 次の課題確認と学習の方法確認
5 次時部分の読み

 

(四) 間接指導と直接指導

重要なことは、直接指導時の話し合いや指示が、次の間接指導にどう生きるかの見通しをつけることである。五年の2)の場合のように、まだ読みとり方になれない段階などでは、より具体的な読みとり方をはっきりさせる。

たとえば、題材「春先のひょう」に例をとれば

○「ひょう」についての記述をみつけてしるしをつけよう。

○「ひょう」に対するおかあさんの気持ちが表われる文をみつけよう。

○これらの文をもとにして、おかあさんの気持ちを考えよう。

また反対に間接指導時の学習活動が次の直接指導でより生きるために、自己の読みとりを確かめる方法、ノートのメモ、書きこみなどのルールが必要である。五年3)で、多様な活動をしておけば4)の直接指導がより充実してくる。

(五) 間接指導時の自学の方法

直接指導時の学習が次の間接指導で生き、その逆にも有効に働くためには、学習のルールづくりや、学習形態、資料の活用等が大きな役割をもつことになる。また絶えず実際の文に即して指導し技能化する努力が必要である。

教師が直接についていなくても、学習をとぎれることなく進めさせるためには、自学の結果の明示、結果の確かめ方、学習段階や見通しをもつ、協力学習のしかたなどの手だてを身につけさせることがたいせつである。

 

 

 


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