教育福島0034号(1978年(S53)09月)-037page

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8)保健 9)美術 10)音楽 11)体育

○中学校

1)英語 2)社会 3)数学 4)言語技術 5)体育 6)美術・工芸 7)理科 8)物理・自然科学 9)音楽

○高等学校

1)大学準備課程2)実業教育課程 3)一般教育課程 4)工芸・職業課程

ここの教科領域は州教育法に規定されている州内共通のものである。高校については課程だけ記されていて教科領域は記されていないが、郡市ごとにきめられている。

 

四、カリキュラムガイド

 

1)カリキュラムガイドは州の法的必要条件と教育委員会によって採用された教授計画の目的と調和して作成されるべきものとする。

2)教育長又は教育長代理は、指導要領とカリキュラムガイド作成に対し一般的な調整的権限及び監督権を持つべきものとする。

1)のカリキュラムガイドとは地区内共通の各教科の指導規準ないし指導大綱のことであり、州の法的必要条件−前記の州教育法に規定されている教科領域−と教育委員会がきめた地区の教育目標とを考え合わせて作成すべしとある。このカリキュラムガイドは、地区内の各学校各教科主任と市教育局の担当指導主事から構成される学校別教科別の地区カリキュラム委員会が作成する。

2)の規定と関連して、カリキュラムガイド作成の段階で教委は地区カリキュラム委員会に入っている指導主事を通じて監督権・調整権を発揮している。

また学校に対しても校内の指導要領作成や改定の時原案を地区カリキュラム委員会に提出させて承認を得させることにより監督権・調整権を発揮している。

よくアメリカの学校の教師は自主性が尊重され、自己の責任において自由な教育活動が保障されていると言われるが、実際には教授、カリキュラム編成面では、各教科の指導主事やカリキュラム専門職員等のスタッフを擁する郡市教委の監督権・調整権が働いていることを知るべきである。前記のカリキュラムガイドが現場教師の自由な教育活動に大枠をはめている。現場教師はこの大枠の中では自由であり自主性や創意くふうが認められていると考えてよい。

現場教師の教育活動に対するもう一つの規制は、前記教育課程前半のカリキュラム研究の要因の3にある地域住民の要求である。すなわち父母をはじめとする地域住民のきびしい監視の目が子供の教育にあたる現場教師に対してそそがれる。これはアメリカ建国以来の伝統を持っている教育の素人支配と称されるもので、PTAや学区教育委員会の活動に象徴されている。

しかし反面、アメリカの現場教師は、地区の研究会他の数多くの研修の機会や、社会科他の論争上の問題を教材として扱う際の教育の自由(アカデミックフリーダム)、更に教科書他の教材選択の自由が教委によって保障されている点などは見逃せない。紙数の制約上これらを一つ一つ資料をあげて検討する余裕はないが一つだけ教科書選定に関する資料を出して検討してみよう。

 

五、教科書選定の責任

 

教室教材の選定の勧告は、教師、教科主任、校長、地区教科委員会、指導主事又は教材専門家から発する。教室教材選択の責任は教育委員会にある。

現場教師は自分の学校の指導要領にしたがって校内の同じ教科の他の教師たちと合議で教材選択を行っているのが実情なのだが、この資料により一応現場教師に教材選択権ありと考えてよいであろう。最終的な責任は教委がもつから現場の教師諸氏は心配しないで自分の責任で適切な教材を選んでくれということなのである。

以上アメリカのコロラド州コロラドスプリングズ市での、市教委と学校との関係をカリキュラム編成面を中心に見てきた。同じ州内の他の郡や市もほとんど同じやり方をしていることを、コロラド州立大学コロラドスプリングズ分校の学校教育学の教授から伺った。カリキュラム編成面での郡市教委の役割の重大さをしみじみ知らされた感じがした。

なおコロラドスプリングズ滞在中、学区教育委員会の定例委員会を傍聴する機会に恵まれたが、定例委員会にはいつも地域住民の傍聴が認められ、議題の審議終了後に身近な教育問題について公開質問をしている様子を見て感心した。PTAなども会員に子供を学校へやっている父母以外の一般の大人もなれる国柄なのである。こうした学区教育委員会やPTAが前述のように、教師の教育活動に対してブレーキの役を果たしていることも事実であるが子供の教育に地域住民はいかに熱心であるかを思い知らされた。

最後に全くの蛇足ではあるが、最近外国とくにアメリカの教育の制度や内容・方法の研究が盛んで、その研究成果を日本にとり入れる傾向がある。これはなにも今に始まったわけでなく明治以来の日本の傾向なのだろうが、大いに問題だと私は考えている。やはりアメリカと日本は歴史がちがうし風土や生活様式もちがう。比較教育の研究が進めば進むほどこの点は大いに考えなければいけないと思う。我々は外国の経験に学びながら、本当に我々日本人に適した教育の制度・内容・方法をみずから創造してゆくことがたいせつなのではあるまいか。

(福島県立原町高等学校教諭)

 

 

 


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