教育福島0034号(1978年(S53)09月)-040page
図書館コーナー
読書感想文の問題点
夏休みは、子供たちにとって読書感想文のシーズンでもある。
課題図書の中から、あるいは自由に読んだ本の中から読書感想文を書くことについて、どの本がよいか、またどう書くべきか、子供たちや母親から、よく相談をうける。
読書感想文を書くには、第一に豊かな読書経験が下地として必要と思われる。読書の楽しみや感動をみずから見出し、他の人たちにも語りかけたいという感情が読書感想文の基底になるはずである。第二に、他人にも自分の感動や、作品から学びとったものを伝わるように書くという、作文の力も必要である。今は、第一の読書経験のみをとりあげて、読書感想文の問題点を考えてみることにする。
読書感想文を書くということは、大多数の子供たちにとっても、また、子供の宿題を監督する親にとっても、他の宿題にくらべて気が重いことらしく、夏休みの最後まで残ってしまうらしい。夏休みも終りに近づくと、友達連れで、または親子いっしょに、読書感想文を書くための本を探す人たちのお手伝いで児童室の仕事は忙しくなる。
足繁く図書館に通い、本を読むことの好きな子供や読書能力のついている子供にとっては、読書感想文のための本は自分で決められるし、また決められない場合でも、ちょっとしたヒントやアドバイスによって、それほど時間をかけなくともほとんどの子供が自分に合った本を探し出せる。
しかし、今まで本らしい本を読んだこともなく読書の楽しさも知らない子供、読書習慣が身につかず作品の世界になかなか入りこめない子供にとって読書感想文は、課題図書はその子供にとってレベルが高すぎるということではなかろうか。自由読書の場合はその子供に合った本を探し出すことが、本当にむずかしい。それでも、その子供の読書経験や生活状態等の予備知識でも持ち合わせていれば、子供に合いそうな本をそろえて、選ぶ手助けをすることもできる。しかし、初対面の子供の場合は、子供がデーターを探り出すこともままならず、また短時間のうちに子供に合った本を探すのは至難の技である。
そのようなとき、読書感想文を書くということは、感想文を書く以前の問題でつまづいてしまう。
表1・表2は、毎日新聞社で実施した全国学校読書調査(昭和五十二年実施)のうちの読書量の表である。
小学生に限ってみると、小学生の一か月の平均読書冊数(表2)は四・七冊である。子供の読書ばなれがうんぬんされている今日、月平均五冊弱というのは意外に思われるかも知れないが○〜二冊までの子供が四〇%近くいる(表1)ことに注意されたい。また不読者層も三十八年には○・五%だったのが五十二年(表2)には一四%に増えている。また学年別読書量をみると高学年になるにしたがって減っている。
読書は好きだという大人でも感想文のための読書は苦痛なものである。
読書の楽しさを知り、読書能力のある子供にとっては適切なアドバイスによって、読書感想文を書くということは、作品をそしゃくしテーマにせまるためにも意義があり、それによって本を読むことまで嫌いになることはないだろうが、読書は苦手だという子供にとってはどうだろうか。子供たちは読書感想文を書くための事前指導をじゅうぶんに受けているのだろうが、読書の楽しさをまず身につけることの方が先ではないだろうか。
表1 年度別読書量
表2 5月1か月の間の読書冊数(教科書・自習書・マンガ・雑誌や付録を除く)
小 中 高
0冊 14.2 31.7 43.9
1冊 12.5 18.5 20.0
2冊 12.2 15.6 14.7
3冊 13.1 10.7 8.7
4冊 10.3 7.1 4.2
5冊 9.0 5.2 3.8
6冊 8.3 3.1 1.6
7冊 3.3 1.7 0.8
8冊 3.0 1.4 0.7
9冊 2.1 0.7 0.2
10〜15冊 7.9 3.1 1.1
16冊以上 3.9 1.3 0.2
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