教育福島0035号(1978年(S53)10月)-011page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

項に規定する保護者の就学義務のうち、養護学校に関する部分は、昭和五十四年四月一日から施行されることである。

従って、精神薄弱、肢体不自由又は病弱の程度が学校教育法施行令第二十二条の二に定める程度の子女の保護者は、その子女の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十五歳に達した日の属する学年の終わりまでこれを養護学校の小学部及び中学部に就学させる義務を負うことになる。

設置義務に関する事項については、学校教育法第七十四条に規定する都道府県の学校の設置義務のうち、養護学校に関する部分は、昭和五十四年四月一日から施行されることである。

従って、各都道府県は、昭和五十四年四月一日以降、その区域内において養護学校への就学義務を負うこととなる保護者の子女を就学させるに必要な養護学校の小学部、中学部を設置しておかなければならないことになる。

 

5)養護学校教育の課題

養護学校教育の義務制ということになれば、今までの学校教育の考え方では教育の対象にならないと考えられていた子供たちにも教育の光をあててやるきめ細かな施策が必要になる。

障害の重い子供の複雑多岐な実態からみて、まず、多様な教育の場を設けることが考えられなければならない。その際、とくに重要なことは、障害の重い子供の多くは、通常、医療上、生活上の規制を必要とすることが多いため、医療、福祉等と一体となってその教育が行われるよう配慮しなければならないということである。

次に、この多様化された教育の場の中で、これらの者にとって、その心身状況に応じ、いずれが最もふさわしい教育の場であるかを考え、就学指導をする必要がでてくる。このために、心身の状況を、医学、心理学等の関連諸科学との連携のもとに教育的には握する方策が考えられなければならない。

更に、この教育にあたる教職員を確保し、これにいっそうの専門的知識・技能を修得させる必要がある。

障害をもつ子供の実態はさまざまであり、実際の教育にあたっては、これを画一的に考えることなく、まず個々の心身の状態を出発点とし、これに対応する教育を行う必要がある。

 

(四) 障害幼児及び障害の重い児童生徒の教育

 

障害の重い児童生徒の教育を、重度重複障害教育と言い、近年その教育の研究が取りあげられ、障害幼児の教育以上に、今までの特殊教育の原理や方法では解決のつかない、もっと基礎的な人間の本質にかかわる教育としてとりあげられるようになってきた。

○ 人間の本質を豊かにそだてる

重度・重複障害教育は、人としての芽生えを探し、それをどのように育てるかにある。

対象が年少、または、障害が重度であっても、普通の子供と同じ筋道を通って成長するので、その子の初期学習をこなせるような働きかけをくふうすれば、今まで使わなかった感覚をしだいに利用し、その子なりの運動を自発し、人としての本質を豊かにすることができる。

○ 教育の壁と始まり

対象が年少、とりわけ障害が重度であると幾つかの壁が立ちはだかっているが、一般的傾向として、

○ コミュニケーション手段をほとんど習得していないこと。

○ 生活の世話は全面介助で、身辺処理は、ほとんど自立していないこと。

○ 体は虚弱で、異常行動であるか、発作であるか見きわめが難しいこと。

○ むやみに頭を打ちつける、方向の定まらない動き、所かまわずの失禁。

等目をみはる特異な行動をともなう。

その他いろいろの行動があるが、よく観察すると、ほんのわずかではあるが、明らかに外界の刺激を取り込んで、みずから外界に働きかけるような自発的行動が認められる。これらの心の芽生えは、まだ力が弱く、持続力がなく、瞬間的に消えていくので気がつかない場合が多い。これをキャッチし、適切に対処することが教育のはじまりとなる。

○ 重度・重複障害教育の教育課程

重度・重複障害教育が、現在、担任教師が対面している子供から出発するものであり、人の本質を豊かにする教育である限り、その子に合わせて教師が自力で編成し、一人一人の子供をどのように、どんな方法で教育していくかは、担任教師のくふうと地味な努力の積み重ねにまたなければならない。

一つずつ学習を積み重ねることにより少しずつ子供は成長していくものである。

一時的な動機づけや道具的な条件づけの学習、機械的な強制や同じ学習はいくら繰り返しても、その場限りの反応であり、応用のきかないものになる。その子の人としての成長特に運動を自発して外界に働きかける力、自分で考える力を引き起すためには、主体者内部の状態変化についてよく観察して、指導をくふうし、学習内容を反省、深め更に教材の創意くふう、提示のタイミング等を考え、その子に応じた学習法を開発することが教育課程を編成する根本である。

 

1)盲・聾・養護学校における指導の実際

ア、盲学校における重複障害教育

県立盲学校

 

近年、盲学校にも重複障害を有する児童生徒が多くなってきている。障害の程度、種類、行動の特徴などは実に多種多様である。幸い盲学校には重度の障害を有する児童生徒は少ないが、いわゆる「盲精薄」といわれるものが小学部に多くなってきている。本年はこの現状に対処するために校内操作により小学部に一学級の重複学級を設けている。

A・Y(三年)、F・Y、Y・S(五生)に関する指導実践を報告する。

 

ア) 対象児について

○A・Y(女)全盲(視束委縮による

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。