教育福島0035号(1978年(S53)10月)-012page
失明)てんかん発作、精神発達遅滞、情緒障害、言語発達遅滞などがある。
○F・Y(女)弱視(先天性白内障、両眼視力○・○三)小児ぜんそく、慢性蓄膿症、ハレルマンストライフ症候群、精神発達遅滞などがある。
○Y・S(女)全盲(未熟児網膜症による失明)異常脳波所見、精神発達遅滞などがある。
これらの児童は、いずれも生活や学習状況において、はなはだしい制約があり、自由に行動できるいわゆるテリトリーも狭い。身体運動なども不活発で、幼児期からの基本的しつけや訓練のふじゅうぶんさなども加わって、身体的には虚弱であり、精神発達もおくれ、また一人一人の行動は実に自己中心的である。
イ) 教育の方針
心身の発達がおくれている児童でも、学校生活を送る中で、適切な扱いを受け、あるいは、環境条件をかえることなどにより、著しい変化を生ずる可能性は大いにある。この対象児たちの教育のめざすところは、普通児に対する一般教育のそれとなんら変らない。将来は社会の一構成員として生きることのできる人間形成をめざしているのである。
この児童たちは、視覚機能の障害のほかに、精神発育のおくれという欠陥を併せ有している。そのために一人一人には特異な行動が多く、意思の伝達などもじゅうぶんでなかったり、身辺自立も満足にできない。更には、指先きの触運動も不確実と、あらゆる面に困難性を示している。
現在は、初歩的な学習にはいる前の準備段階として、日常生活動作の訓練、集団生活のルールなどについてとりあげ、盲精薄の行動の特殊性を考慮しながら発達レベルに即した方法で積みあげをしていくことが指導であると考える。
触覚を中心とした構成学習
ウ) 指導目標
児童たちは、歩行が未熟であるため
○ 身体運動が活発だったり、身辺生活(食事、排せつ、更衣など)の基本である生活習慣の自立ができないという実態、従って他に依存して生活しようとする現状を自発的な運動を喚起しながら、絶えず歩行を促進することにより、その改善をはかる。
○ 視覚刺激の受容器に欠陥があるために、一人一人の探索活動がじゅうぶんに発達せず、逆に警戒し防御反応が強く発動する実態だが、学校という特定状況において、集団活動に積極的に参加させる機会を多くし、触運動のコントロールをじゅうぶんに行い、運動の分化の促進をはかることにより、社会的自立の方向にすすめることができる。
エ) 実行
○ 歩行の指導
児童が自分の意思により移動の必要を感じ、身体各部の運動を発達させながら歩行技術を向上させるように、体育、養護訓練等のときに、校舎内外で指導する。
○ 感覚、特に触覚、聴覚、臭覚などを活用して、概念形成を促進させる指導を行っている。
○ 基本的生活習慣の形成をねらいとした身辺処理力を確かなものとするための指導。
○ 遊び、手伝い、あいさつ、勤労などを主とした対人関係への適応。
集団生活への参加のし方、時間を守って生活する態度などを内容とした日常生活学習。
○ 文字の初期指導(点字、墨文字)
○ その他、健康安全の指導などを進めてきている。
オ)終わりに
この児童たちも、昨年度は、当該学年の学級のなかで生活し、特に設定した学習や訓練のときだけ、学級からみちびき出し、個別指導を行ってきたが、結果的には満足できる指導ではなかった。本年は、当初から、重複学級に位置づけ、生活することにより、他に依存する態度も漸次うすらいできて、自力で事物を処理するようになってきている。
基本的生活習慣の形成についても、おおよそ同じ程度の能力のものを対象に、じっくりと手をとり、個別的に指導できるので、その結果は少しずつではあっても向上してきている。
朝の会、諸集会行事などには、対等な立場で参加しているので、ひとりひとりはそれなりの努力をし、成就感を味わい楽しく生活している。発足して間もない重複学級で生活している児童たちであるが、ひ護されて成長するのでなくて、自力でどんどん成長してほしいものである。
イ、聾学校における幼児教育
県立聾学校
早期教育の必要性から、県立聾学校に幼稚部が設置され、すでに十年を経過し、現在、本校(郡山)、分校(福島、平、会津)合わせて四十名の聴覚障害幼児に対する教育が行われている。当初、五歳児のみを対象としていたが、現在は三歳児からとなり、このほか、一、二歳児への定期教育相談(週一回)も実施されている。
ア) 対象児(表3参照)
この稿では、昭和五十一年四月、本校幼稚部に入学した三歳児三名(別表)の教育について、聴覚補償と言語指導の一端を報告したい。
イ)教育の方針