教育福島0035号(1978年(S53)10月)-013page
○ 聴覚に障害があるというものの幼児であることにかわりはない。
幼稚園教育要領に示されている基本方針は、この教育においても同じである。
○ 残存する聴覚、視覚その他の感覚を可能な限り活用する。
○ 障害にばかりとらわれることなく、発達の遅れやひずみを是正し、明るく、のびのびと生活できるように育てる。
○ 家庭との連係、とくに母観とともに子供を見つめ育てる。
○ 普通幼児との交流を積極的に行う。
ウ)指導目標
○聴覚補償について
・ A児については、良耳への補聴器装用により、聴覚中心の音声言語受容を図る。
・ B、C児は、補聴器の両耳装用により、聴覚、視覚併用の音声言語受容を図る。
○ 言語指導について
・ 初期指導においては、音声言語以前の表現活動(指示、身振り、表情など)を重視して、伝え合う喜びや意欲を育てる。
・ 普通児と同じように、自然な場で言葉を教えるようにする。
・ 視覚や、聴覚による音声言語受容のあいまいさを補うため、早期に文字記号を導入する。
エ)実行
○ 聴能訓練の事例
・ 音に対する反応あそび
素材 増幅音(レコード、声)
太鼓、シンバルなど
方法 じゅうぶんに聞こえると思われる音を用い、聞こえたら、振り向く、立つ、すわる、手をあげるなどの動作をしてあそぶ。
・ 声あてあそび
素材 増幅音(身近な人の声)
方法 男女の声の区別、なき声や笑い声などの区別、絵カードをひろったり、名前を言ったりしてあそぶ。
○ 言語指導の例
・ ストローあそび(発音指導)
教具 コップ、ストロー、鏡
方法 歯のうしろと、舌先の間にストローをはさみ、コップの水面を吹くあそびから、サ行音の発音を指導する。
・ カレンダーワーク
きのう、きょう、あしたの天気、曜日、行事、できごと、学習などをとりあげ、言葉の指導をする。
・ トピックスによる指導
身辺や社会の変化やできごと、気象、四季、自然のうつりかわりなどについて話し合い、言葉の理解や、その場に合った適切な表現のしかたを指導する。
オ) 終わりに
聴覚障害幼児に対する早期教育(家庭における教育もふくめ)は、幼稚部未設置の時代とくらべると、全く考え及ばなかったような大きな変化を遂げつつある。
○ A児は、二年間保育後、今年四月、普通幼稚園に入園することができた。今ではすっかりクラスの中にとけこみ、みんなの人気を集めているということである。
○ B、C児は、重度の聴覚障害にもかかわらず、母音の弁別や、簡単な日常語の聴取が可能となり、身近な人と活発に会話をするようになり、日記や手紙も書きはじめている。
ウ、養護学校
○ 精神薄弱児教育
福島市立福島養護学校
ア) 対象児
○自閉的傾向の強い精神薄弱児 男
小学部二年生(八歳)
○ 行動等の状況
・ 人とのつながりの面では、身近な人からの働きかけにも応ずることが少なく、また、自分から人へ働きかけたりすることも少ない。人への関心は薄いようにみえる。
・ 話しことばはないが、いくつかの限られた要求を動作で示す。
・ 簡単なことばや身ぶりの指示にも従いにくい。
・ 知的活動への興味は乏しく、能力も著しく劣る。
・ ひもや草、紙切れなどを振ったり口に入れてかんだりすることが多い。
・学習時間などじっと席についていられず、歩きまわったりする。
○ 生育歴及び問題の経過と処遇(就学前)(次ページ表4参照)
○ 家族
父(公務員)、母(家事)、兄(小学
表3 昭和51年度幼稚部(3歳)入学児
注 デシベル(dB)は聴力損失の単位、話し声におきかえると、普通の話し声は40dB、大声は70dB、耳もとの叫び声は90dBぐらい。
言語指導「夏休みにしたこと」