教育福島0035号(1978年(S53)10月)-014page
六年)本児の四人家族。
本児の養育の中心は母であり、時々散歩につれ出したりしている。
○ 諸検査
・ 大脇式精薄児用知能検査
検査不能
・ 遠城寺式乳幼児分析的発達検査
移動運動三歳六か月(発達年令以下同じ)、手の運動一歳三か月、言語発達六か月、情意の発達七か月、知的発達六か月、社会的発達五か月
○ 医学的所見
・ 重度の精神薄弱。脳波記録からみてなんらかの器質的障害が推定される。(五歳時、総合病院)
・ 自閉症(八歳時、大学病院)
○ 指導の経過(第一学年)
養護・訓練に関する指導として、学級担任が中心となり、本児の好むひもなどを媒介として、あるいは、からだのふれあいを通して、対人関係の改善への指導を試みた。結果は、きげんのよいときには、自分から教師のひざにのったりすることもみられたが、教師が積極的に働きかけるとひきこもりが多くみられた。
イ) 教育の方針
本児の対人関係の改善について、これまでの学級での養護・訓練に関する指導だけでは、効果が期待できにくいので、第二学年ではそのほかに、担当者による養護・訓練の時間を設定し、個人指導をすすめていく。(週三回、一単位時間四十分、一回一〜二単位時間)
ウ) 指導仮説
これまでの取り組みで、物を媒介として、あるいは身体接触等を通しての教師の積極的な働きかけは、ほとんど効果がなく、かえって本児のひきこもり行動を助長する結果となりやすい。
そこで、本児に対する直接的な働きかけはなるべく避け、教師が本児の好むもので遊ぶなど、適切な見本を示したり、本児の要求をくみとり、それに即応した働きかけをすることにより、教師との好意的な関係ができ、更にこの関係を媒介として、他の児童等との関係づくりも可能になると考えられる。
この観点から表5のような指導プログラムを作成した。
エ) 実行
ここでは、養護・訓練の時間における指導について述べる。
二年生の七月より、環境設定や具体的な指導の手だてを考慮し、指導を開始した。
十二月現在の指導の結果は表6のようである。
先の指導プログラムの2〜3段階を中心に指導をすすめている。
オ) 考察
一般に人との接触の手段はことばが
表4 生育歴及び問題点の経過と処遇(就学前)
表5 指導プログラム
表6 指導の結果 2年生 12月現在