教育福島0035号(1978年(S53)10月)-019page
らない。
軽度心身障害児の中には、学業の遅れや学校・学級生活に適応しきれず、いろいろな問題をかかえている例も多い。また、精神薄弱と言語障害、弱視や言語障害と肢体不自由といった事例もしばしば見うけられる。これらをあわせ有する障害にじゅうぶん対応できる指導計画を作成しなければならない。
2) 軽度心身障害児の指導
どのような場合でもまず心身障害児の指導の基本的なあり方が一貫して、具体的な授業場面、実践場面に生き生きと機能していなければならない。一校時の授業を、対象となる児童生徒にとって意義あるものとするためには、その前堤としてつねに指導の基本的なあり方が問われる。児童生徒を教育の中心にすえ、充実した学校生活を送らせその進路をより良い方向に改善するためには、次のような点に留意して指導すべきであろう。
○ 心身障害児の教育においては、学級経営と学習指導が不離一体をなしている。人間関係をはじめ学級経営の中で絶えず一貫してつちかわれたものが学習指導に深くかかわってくる。
○ 教育課程をはじめ、教材、教具の創意くふうと改善は日常的なことがらとしてとらえ、実態に即応した指導の探求につねに留意しなければならない。
○ 心身障害児の指導は、児童生徒みずからのからだを使い、作業を通し、頭を使って体験的に身につけることがらが多い。
等いくつかあげられよう。
ところで、精神薄弱児を例にとればその一般的特性として興味、関心の範囲がせまいとか集中力に欠けるといったことがあげられる。しかし、図面工作の展示会・バザー等で見かける作品は、指導が適切で課題が児童生徒にちょうど合ったものであれば、きわめて正常な学習活動がなされることをも裏づけている。
二、心身障害児の就学指導と就学手続き
障害の種類と程度に応じて、適切な就学措置が決定されることは、障害児の一生にとって、極めて重要な意味をもつことはいうまでもない。そのために、慎重にしかもきめ細かな就学指導のできる、しくみと手続きとが必要になる。ここでは、そのしくみと手続きについて、政令並びに省令の主な改正点を中心にまとめてみよう。
(一) 県就学指導機関と市町村就学指導機関
1)県の就学指導機関
心身障害児の診断と就学指導について、市町村教育委員会に対して適切な指導・助言を行うため、県内四方部に「福島県心身障害児就学指導会議」が設置されている。四方部とは、県北、県中(県南を含む)会津のほか、相双教育事務所で庶務を担当する浜通り方部の四地域である。
この組織は、医師、大学教授等の学識経験者を主として福祉機関の関係職員に加えて関係教職員等、計十五名のメンバーで構成されている。
ここでは、市町村教育委員会より委託を受けた心身障害児の障害の種類、程度の判定と、就学の指導に関することを主として取り扱う。そのほかに、就学指導に関する資料の収集及び配布に関すること、就学指導に必要な市町村教育委員会との連絡調整に関することなど、幅広い立場からの専門的な検討がなされるのである。
市町村教委が、この就学指導会議に審議を委託しようとする場合は、該当児童生徒及び幼児の個人調査票(様式あり)に所定の事項を記入し、資料を添えて県教育委員会教育長あて提出すればよい。なおこれからの委託申しこみ期間は、十一月初旬から十二月中旬ころまでになる予定である。
就学指導会議は、慎重な審議を経た決定事項を県教委に通知し、県教委は、市町村教委がその決定事項に基づいて、適切な措置をとるよう指導することになる。
なお、養護教育に対する啓発事業として、今年度は、義務制趣旨普及のための講演会、更に養護教育に関する巡回相談等が、この就学指導会議の事業として実施されることになっている。
2)市町村の就学指導機関
それぞれの地域内における心身障害児の実態を正確には握し、障害の程度の診断と適切な就学指導をすすめることは、市町村教育委員会の重要な仕事である。特に、養護学校の義務制がスタートすることによって、学齢簿編製の義務を負う市町村教委は、従来の盲者、聾者に加えて、精神薄弱者、肢体不自由者、病(虚)弱者の就学についても、適切かつ円滑な就学指導事務をすすめなければならない。
今年四月には設置率が五七・八%だった市町村の就学指導審議会は、八月末には八十%台に伸び、今年中には全市町村に設置される見通しとなった。適正な就学指導の必要性と重要性とが、市町村関係者に正しく認識されてきた証左であろう。
各市町村に設置されている「心身障害児就学指導審議会」は、県が準則を作成して五十二年度から指導してきた、地方自治法に基づく条令による設置形態と、教育委員会規制による設置形態とがもっとも多い。また、各市町村単独設置のほかに、県中・県南に多い数町村の共同設置形態と、事務委託形態とがある。
いずれの設置形態であっても、この審議会は、心身に障害がある就学予定者、小中学校児童生徒のうち盲・聾・養護学校又は特殊学級で教育をうけることが必要とされる者、就学猶予又は免除を願い出た者及び現にその措置をうけている者等についての、就学指導と教育相談に関する事項について調査