教育福島0035号(1978年(S53)10月)-030page
研究実践紹介
読む力を育てる指導法
田島町立栗生沢小学校
一、はじめに
本校は、町の中心より約七キロメートルの山間へき地にあり、児童数三十名、職員六名の小規模校である。テレビは各戸にあるが、新聞を購読していない家庭も多く、また町との交流が少なく、言語環境もよくない。
児童の国語力を学力検査で見ると、各領域のうち読解力が劣り、日常の言語活動も活発でない。分析の結果、まず文章が読めないので読みとる力もついていないのではないかと考え、音読の指導に重点をおいて研究しようとして、このテーマを設定した。
二、研究のねらい
(一)すべての子供に読む力をつける指導のあり方を探る。
○音読を指導のてがかりとする。
(二)読む力をつけるための学習カードを作成し、その活用方法を研究する。
三、研究の計画及び経過
(一)第一年次(五十二年度)
○読むことの学習における基礎研究。
(二)第二年次(五十三年度)
○音読の力をつけるための一方法として、「音読学習カード」の試案を作成し活用を図る。
(三)第三年次(五十四年度)
○教師による「リード読み」を実践し、その事例を考察する。
○音読と内容理解がともに高まる授業のあり方を考察する。
四、研究内容
(一)文章をすらすら読めるようにするため、「音読学習カード」の作成と活用を研究する。
(二)指導過程の中に「音読指導」の機会をどのように位置づけるか。
(三)音読・読みとりの学習方法を訓練し児童の身につく、確かな読みとりができるようにする。
五、実践例
(一)音読学習カード(表1参照)
○これは音読の練習をしたり、みんなの前で音読するときに自分の読みぶりを記録するためのものである。上段は自己評価に、下段は教師の評価や友達同士の相互評価に用いる。
○下段の読み方カードは、同形式のものを多くプリントしておき、子供が音読するたびに教師や友達がそのカードにチェックし、音読した子供に手渡す。それをもらった子供は下段にのりづけする。
○このカードは新しい単元にはいったときから終了するまで使う。
○音読の評価の観点としては、次の三項目を掲げた。
1)まちがえずに読めたか。
2)声の大きさはよかったか。
3)文やことばの区切りはよかったか。
(二)授業の一例
1)実施学年 第一学年
2)単元名 「かくれんぼ」
3)単元設定の理由
入学して三か月、これまでひらがなの読み書きからスタートし、短文を作る、話の筋をとらえる、はっきり読むなどの学習を通して、子供は、読むことに興味を示し、かなりの文章も読むことができるようになってきた。
そこでこの時期をとらえ、川の中での、めだかやどじょうの遊びの世界をたいへんユーモラスに描いた教材を学習することによって、読むことの楽しさを味わわせ、児童の読みに対する興味を盛り上げたいと考え、この単元を設定した。
4)単元の目標
・話の内容を豊かに想像しながら、話の移り変わりを読みとれるようにする。
・登場人物のユーモラスな動作や様子を感じとり、楽しみながら読むことができるようにする。
5)指導計画(総時数六時間)
・全文を音読し、感想を話し合わせる。 一時間
・話の移り変わりを読みとらせる。 一時間
・登場人物の行動、様子を読みとらせる。 二時間
・おもしろかったところを話し合わせる。 一時間