教育福島0037号(1978年(S53)12月)-007page

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年(昨年)には、さっそく「文化を考える県民会議」が開催された。四十三人の委員の熱心な討議や併行して得られた県民文化意識調査及び意見などを基に、この会議は本年三月に県に対し十項目の提言を中心に「福島県の文化振興について」と題する報告がなされたのである。(本報告書は、市町村、同教委、公民館、各市町村文化団体関係に配布済み)

「本県の文化振興策についての具体的提言」(付属説明略)

一、文化的風土・環境の醸成を図る総合施策を推進すること。

二、文化行政組織の強化・拡充を図ること。

三、文化施設の充実・拡充・整備を図ること。

四、公民館の整備・充実とこれに対する必要な指導と助成を強化すること。

五、文化振興基金(文化振興財団-仮称)の創設を図ること。

六、芸術文化の普及・振興をより積極的に推進すること。

七、文化財・史跡・遺跡の保護・保存と民俗芸能等の保護・伝承を図ること。

八、県民の生涯(がい)教育の体制を整備すること。

九、学術の振興を図ること。

十、県民の文化意識を高揚するための広報活動等の活発化を図ること。

これらの提言を含めた報告書は、今後の県・市町村はもちろん、文化関係者の指針となるものである。

県はさっそく本年度、これら提言のうちからテーマを選び、「県文化振興会議」を設置し、提言の施策化を図ることとした。ここでは提言第三の文化施設の整備について新しい構想に基づく県立図書館・美術館・博物館の建設について論議されており、基本的方向が打ち出されることになろう。

また、提言第五の文化振興基金の創設についても具体案が示され、新年度から発足する方向で検討された。この詳細については、財団設立後、決定されるものであるが、趣旨は、県民文化活動の成果発表事業や文化財の保護事業の助成と優れた活動成果の顕彰を主とし、県民の文化活動の向上と、活発化を図ろうとするものである。そのため三年間で県と市町村と民間がいっしょに五億円を目標に基金つくりに努め、その利子で財団運営と助成、顕彰事業を進める構想になっている。

この基金つくりには県民みんなでつくることとし、個人・団体・企業の浄財と公費を充てる方向であるが、募金の方法等は、今後、財団設立後広報されることになろう。このさい、県民のひとりでも多くが基金拠出に参加することは、県民文化を高める意志を基金として未来に残すことであり、子孫のための文化遺産つくりとして意義のある行為であり、更に、みずからに還元されるものであることを考慮すれば県民各位の積極的な善意が期待される。

 

今後の課題

 

今後、さしあたっては、前項の基金と施設に関わる具体化という大きな課題があるが、更にほかの提言の趣旨を具体化することも大きな課題である。とくにこの提言の序文で「…文化の向上のためには、私たち自身がその生活を、向上心をもって見直さなければならないし、同時に県市町村もそのすべての行政分野にわたり県民の精神生活に豊かさと安らぎと潤いを提供するように、文化的配慮をもって、行政が遂行されなければならないと考えます…」と述べているが、このなかの“すべての行政分野にわたり…文化的配慮をもって…”ということは、今後の行政に重要な意味を持ってくると思われる。提言でいう“文化”は県教育庁文化課が所掌している芸術文化や文化財保護だけでなく、広く、衣食住の様式・知識・信仰・道徳・法律・社会慣習から産業全般、生活文化までとらえているために“すべての行政分野”に関係することになろう。しかし、どこまで行政の対象とするかが問題であるし、“文化的配慮”とはどういうことかも考えなければならない。

本年五月ごろの新聞で国会筋からの提案で、文部省が公共建物の壁、天井、ロビーなどを美術作品で飾るため、建築費の一パーセントを別に加えることについて検討をはじめたと報道された。これも“文化的配慮”のひとつであろう。すでにフランス文化省では、アンドレ・マルロー文化大臣のときにつくられた、建築費の一パーセントを公共建物の装飾工事にあてる制度がある。これは同省芸術文学総局芸術創造部第二課が担当し、工事に関する芸術家の指名やその装飾案の審査のほか、他の省の建物装飾の指導も行っている。また同省建築局建築創造課では、建築創造の条件について関係者への指導や協力を行っている。

近年、県民の参加する文化活動は、年を追って活発化し、団体、会員ともに増加しかつ質も高まっており、今や

 

第3回県文化振興会議

第3回県文化振興会議

 

 

 


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