教育福島0037号(1978年(S53)12月)-044page

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図書館コーナー

 

図書館のシステム化

 

全国公共図書館奉仕部門研究集会が、去る十一月十四・十五両日、全国から百五十名余の公共図書館職員の参加を得て、福島市市民センターで開かれた。

研究主題は「図書館のシステム化」ということで、講義、事例研究、シンポジュームなどにより、この問題についての理解を深めることにあった。

「図書館のシステム化」は、アメリカやヨーロッパでは普通のことであるが、日本ではまだ普遍的なものではなく、実践面でも大都市圏を中心に数十館の例を見るに過ぎない現状である。従って「図書館のシステム化」ということの意味すらじゅうぶんに理解されているとはいえないし、その理論化もそれほど深くなされているわけでもない。

しかしながら、公共図書館が生がい学習の機関として、住民の学習を保障する機関として、その存在を確実なものとするためには、「図書館のシステム化」はどうしても避けてとおれない問題であり、そう遠くない将来において、システム化の道を歩むことになるだろう。そこで、この研究集会で明らかになった「図書館のシステム化」とはどういうことなのかを要約して、関係者の理解を得たいと思う。

「図書館のシステム化」とは、一言でいえば「複数のサービスポイント(分館・地区館・移動図書館・配本所等)が、有機的に活動することによって、より合理的なサービスを実施し得るための組織が制度化されている」ということである。

わかり易くいえば、一つの自治体にAからEまで五つの図書館があるとする。この場合、 一つ一つの図書館の力量は小さなものであっても、五つの図書館がお互いに連携しあうことによって、大きな力となり得るということを意味する。

日本の現状では、一つの自治体に一つの図書館というのがほとんどであるが、一つの図書館だけでは、地域住民に対してじゅうぶんなサービスができないことは自明であり、こうした一館主義はすでに崩壊しつつある。

一つの自治体の中に、なぜ小学校が数多く配置されているのか、それはいうまでもなく教育の機会均等のために、児童が歩いて通学できる範囲になければならないからである。そうであるならば、公共図書館もまた利用の機会均等を図ろうとするなら、児童を含めたすべての住民が、歩いて利用できる範囲に設置されていなければならないことは、当然のことのように思える。

こうした観点から、一つの自治体で複数の図書館を設置するところが数多くでてきているわけである。従って、システム化を考える場合は、当然に地域住民に対する全域サービスのためのサービスポイントが、適正に配置されていることが前提となる。

システム化の要件としては、まず、いくつかのサービスポイントの一つが、調整権を持った中核となること、または中心館でなくても調整権を持った委員会のようなものが組織化されていることが必要である。

二つには、資料の収集及び提供の組織化ということがあり、具体的な内容としては、一つ一つの図書館が所蔵する蔵書の総合版としての総合目録の作製とか、サービスポイントを巡回して、中心館からの、または逆にサービスポイントから中心館に対する連絡を受け持つ連絡車の配置などが欠かせないものとなる。

それから整理作業の集中化、あるいはそれぞれの図書館が分野を定めて資料の収集に当たるとか、一つの図書館では、年々増加する図書を収容し切れないということがよくあるが、こうした場合にはシステム化の下では分担保存が可能となる。また貸し出しとか、返却とか、予約のための集中作業化なども大事な業務としてでてくる。

こうした内容のシステム化をすすめることが、今日、自治体に強く求められている。そして、こうした一つ一つの自治体でのシステム化を基盤として、更に、自治体間でのシステム化による相互協力を可能にし、すべての住民は図書館サービスを最大限に享受し得る体制が整うことになる。

-奉仕部門全国研究集会から-

 

 

 


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