教育福島0037号(1978年(S53)12月)-045page
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やさしい教育法令解説
教科用図書
一、教科書の意義
現在使用されている教科書は、大きく次の三種類に分けられています。
○文部大臣の検定を経たいわゆる検定教科書
○文部大臣において著作権を有するいわゆる文部省著作教科書
○学校教育法第百七条で定めたいわゆる百七条本
なお、現行法上「教科書」というときは百七条本を含まず、含む場合は「教科用図書」とよんでいます。従って教科用図書の方が広い意味で使われています。しかしそれは法令上の用語の相違で、一般にはこのような区別をせず教科書という用語が使われています。
教科書の性格について教科書法第二条一項が規定しています。その主な要素は次の通りです。
・主たる教材として、教授の用に供される図書であること
・教育課程の構成に応じて組織配列されていること
・文部大臣の検定を経たもの、又は文部省が著作の名義を有するものであること。
二、教科書の使用義務
学校教育法第二十一条一項に「小学校においては、文部大臣の検定を経た教科用図書又は文部省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならない。」と規定され、中学校、高等学校及び盲・聾・養護学校にも同条が準用されております。すなわちこれらの学校での教科書の使用義務が明定されています。
ところで、公教育制度としての学校教育では、教育課程の定める教育内容を展開しなければなりません。教科書の内容はこの教育課程の構成に応じて組織排列されており、ここから教科書の使用が義務づけられていると考えられます。
なお、教科書の使用義務についての、伝習館訴訟第一審判決を紹介しておきます。
「学校教育法第二十一条一項は、検定又は著作教科書がある場合には、教師は当該科目の教育活動において、必ず教科書を教材として使用しなければならず、使用される教科書は検定教科書が文部省著作教科書でなければならないことを規定したものである、と解するを相当とする。」(福岡地裁昭和五十三年七月二十八日)
ただし、例外として、高等学校、盲・聾・養護学校及び特殊学級では当分の間、文部大臣の定めるところにより検定教科書又は文部省著作教科書以外の他の適切な教科用図書の使用が認められています。(学教法第百七条)
三、教科書の三制度
(一)検定制度
教科書の著作編集は、民間の著作者や編集者の創意くふうによって作成されています。それだけに内容は最も適切・公正なものでなければならず、それを確保するため文部省設置法第五条に「教科用図書の検定を行うこと」を定めています。文部大臣は検定申請があった場合教科用図書検定審議会に諮問し、その答申に基づいてこれを行う(検定規則二条)こととされています。
なお検定に当たっては、教育基本法、学校教育法等の法の趣旨、教科に共通な絶対条件、教科別に定めた必要条件等を定めた、教科用図書検定基準によって行われます。
(二)採択制度
学校で使用する教科書を決定する採択の権限は、都道府県立の学校は都道府県教育委員会、市町村立の学校にあっては市町村教育委員会(地教行法第二十三条)にあります。国立、私立の学校は当該学校の校長にある(無償措置法第十条)と解されています。
なお採択に当たって市町村教育委員会及び国立・私立の義務教育諸学校の校長は、都道府県教育委員会の指導・助言又は援助を受ける(無償措置法第十条)こととされています。
(三)無償制度
国が憲法に掲げる義務教育無償の理想をより広く実現するために、義務教育諸学校の全児童・生徒に国が教科用図書を給与する制度です。この制度は昭和三十八年度に発足し、その給与の範囲は毎年拡大され昭和四十四年度以降完全無償が実現されています。
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