教育福島0037号(1978年(S53)12月)-048page
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福島の文化財
県指定重要文化財
絹本著色塙保己一像
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この掛幅は、全長約百七十二センチメートル、頭巾をかぶり、中啓(扇の一種)を持った総検校(そうけんぎょう)の正装を斜向きに描いてある。画面右下に方形の二印があり、住吉内記広定の筆であることがわかる。
筆力雄勁(けい)にして温雅、よく保己一晩年の面目を伝えている。世上に復製印行されている画本の原本である。
塙保己一は本姓を荻野氏延といい、武蔵国(現埼玉県)児玉郡金屋村に生まれ、五歳のとき失明、江戸に出て賀茂真渕らに国学を学んだ。異常な記憶力により和漢の学に通暁、天明三年(一七八三年)検校となった。寛政五年(一七九三年)幕府に請うて和学講談所を設立し、「群書類従」正編、「史料」などの大編さんを行った。彼の業績は、明治以後の国史、国史研究に大きな影響を及ぼしている。
塙家は、二代忠宝、三代忠詔と伝え、四代目の子孫が勿来町(いわき市)に移住して保己一の遺品を保存して現在にいたったものである。
なお、保己一の家は実弟が継ぎ、生家は、昭和十九年十一月史跡に指定されている。
わが国文化史上たぐいない足跡を残した学者の肖像画として貴重なものである。
所在地 いわき市勿来窪田町通
所有者 塙保次
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