教育福島0038号(1979年(S54)01月)-008page

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特選 研究論文

児童みずからが語彙を増す語句指導

 

白河市立白河第一小学校教諭 鈴木信正

 

一、研究の趣旨

 

“国語力”の中で重要な分野を担っているものとして、「読み書きの能力」がある。

これは、一つ一つの言葉を大事に取り扱い、書き手の意図を正しく読みとり、また、読み手を意識して誠意のこもった適切な文章を書く力をつけることが基本になっていると考える。

しかし、現実には学習指導や学力テストの結果から「漢字、語句に関する力が劣っている」ことがあげられる。

これは、

(1) 文章読解、作文指導等の指導で内容主義に傾斜してきたこと。

(2) 教材研究では、文脈語句を特に細かにとらえるため、児童への要求が高くなり、児童はこれにこたえようとして、観念的に語句を使用する。

(3) 学習が単調であり、読み書きの練習の域を出ないことが多い。

などによるものであると考える。

そこで、言語のもつ意味、はたらき(使い方)、知識を深めるなど、語彙を増すための観点や方法を身につけさせ、一つの語句の意味の類似、相反、使われ方が比較できるようにすれば、児童みずからが語句(語彙)学習に取り組み、その能力が高まると考え、五年生(三十二名)を対象とした研究である。

 

真剣に学ぶ児童たち(白河一小)

 

二、研究の内容

 

二、研究の内容

 

(一) 研究に当たっての仮説

「新出の漢字、語句について、学習の観点を明確に指導すれば、児童はみずから語彙を増し、読み書き能力を高めることができる。」

(二) 事前研究の段階

(1) 事前の児童の実態は握については、先入観や主観を避けるため、日常使用しているワークテスト、自作の語句テスト、標準学力テストの三つを用いた。

(2) 研究主題及び仮説、研究計画についての理論研究をした。

(三) 研究実践、検証の段階

(1) 評定尺度の設定(資料1参照)

研究主題及び仮説に基づき、次のような観点から検証授業並びにそれに用いた学習帳(語句帳)、事後テストを評価しようと考えた。

(2) 検証授業の実践と考察

本研究の主題、仮説に即し、次の三点をもって授業に臨んだ。

1) 読解指導過程における語句指導計画をもつ。

読解の中で仮説に即した語句指導を行うため、漢字、語句を厳選し、構成、類縁関係、音などに着目させ、語例や用例を通して語句への

 

資料1 評定尺度

 

(1) 新出の漢字,語句について,次のことがらができる。

1) 漢字を正しく読むこと。また書くこと。

(事後,語句テスト)

2) 漢字,語句を文章表現に使うこと。

(事後語句テスト,文章記述)

3) 新出の漢字,熟語等について,同義語・反意語・同音異義語(異字)・構成の似た漢字などをあげること。(事後テスト,文章記述)

4) 新出漢字を含む熟語などをあげること。(事後テスト)

5)児童みずからが観点を決めて学習すること。(語句帳,文章記述)

(2) (1)の結果として,ワークテスト,語句のテスト,標準学力テストの得点があがること。

※仮説の有効性の有無は,各評定尺度の( )書きの方法による。

 

 

 


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