教育福島0038号(1979年(S54)01月)-012page
(C、E)
(5) 言葉(助詞)のつまずきについての指導事例(資料2参照)
(七) 結果と考察
四年のわり算(÷二、三位数)単元の指導終了直後及び二か月後にテストを実施し、他の学級と比較してみた。その結果、全体的には、実践対象学級の方が落ち込みが少なく、力が持続していることがわかった。(資料3参照)
次に、終了二か月後のテスト結果について、どんなところでつまずいたかをみたのが資料4である。
他のある学級と五年生(七十二名)とがよく似ていることがわかる。
以上のことから、この実践が有効であったといえると思う。
(八) 結論
上学年児童のつまずきの傾向と自分の学級の実態とから、わり算でつまずかせないために三つの課題をもち、その解決のための仮説をもとに実践してきたが、この実践は、方向としてよかったと思われる。
作業仮説としたA〜Fの六つの策が具体的なつまずきのどの部分に確実に作用したのかという分析はできなく、いわばその相乗的なものとしてとらえたが、それぞれについて、一応、次のことは言えると思う。
(1) Aについて
記数法による数字と実際の数との関係についておさえることは「くり上げ」「くり下がり」でつまずかせないため重要である。特に、次の点を強調したのは効果があった。「記数法の一意的な表記は最終段階で必要なだけだ。途中の段階では自由に分解したり合成したりできるのだ。」
(2) Bについて
我々は言葉を不用意に使っているといわれるが、式の読み方(助詞の使い方)だけについてみてもそのとおりであった。対策として、具体的な事実問題を提示し、子供から正しい助詞を引き出すような指導をくり返したが、これは「比」(六年)の読み方の素地指導にもなったのではないか。
(3) Cについて
正十二面体のサイコロを使ってのすごろく遊びをしたり、乱数表を利用しての「計算ゲーム」をしたりしたが、遅れている者も進んでいる者も喜んで参加した。グループ対抗のような場合は、高度な問題の解決が得られることもあった。
(4) Dについて
わり算で使った線分構造図は、かけ算との対比から入ったが混乱する子供もいた。中、上位の者には、理解を強化する点で効果的である。子供に目的を失うことなく操作させるという点ではふじゅうぶんであったが、操作による指導を重視したのはよかった。
(5)E、Fについて………(省略)
(九) 今後の課題
目的意識をもって操作活動をさせるための手だて等について検討し、実践してみたい。
◇講評◇
(一) 児童の実態に即して身近な課題を設定し、具体的でしかも綿密な対策をたてて進められている。また、実践の過程に、創意・くふうがみられ、児童の学習意欲を喚起しながら、理解・定着度を高めようとしている。
教材研究のあり方を示唆する実践例の一つと考えられる。
(二) この実践研究を足場にして、更に新しい課題に積極的に取り組み、算数科学習指導上の問題点解明に努めてほしい。
資料2 言葉のつまずきについての指導事例
資料3 指導後の落ち込み
資料4 1人当りの観点別誤答数