教育福島0038号(1979年(S54)01月)-013page
特選 実践記録
発達の特性をふまえ、一人一人の泳力をのばす指導はいかにあるべきか
いわき市立平第一小学校教諭 武藤与史昭
一、研究の趣旨
いわき市といえば、海に面し「水」には大へんなじみの深いところである。
しかし、最近十年間の歴史をたどってみると、水泳に関しては県内で最低のレベル地区と変わってしまった。
このことから自校の実態を分析し、
1、ボール運動による調整力の養成とボール運動の水泳指導への位置づけ
2、クロール泳法の段階的指導
3、児童が意欲的に取り組める指導過程の研究
などの観点から指導法の改善により泳力の向上を図ろうとした。
特に、低学年から中学年までの泳ぎの伸びと、中学年から高学年までの伸びを比較した場合、資料1からいえるように、低学年から中学年の伸びが著しい。この時期は、水に浮きやすい時期であり、水泳における身体支配力から考察した場合も指導が最適であることから、指導上たいせつな時期である三年生を対象としての研究である。
資料1 本校の皆泳率(昭和50年度) 10m以上泳げる割合
二、実践の内容
(一) ボール運動の取り扱いと指導過程への位置づけ
◇ボール使用の意義
調整力を養うという観点からすれば、水中におけるボール保持は、安定性を欠くために、常に平衡にもどそうとする感覚を維持しなければならない。この不安定な姿勢を無理なく安定した姿勢にもどすためには、
○協応動作(手・足・呼吸)
○バランス
○タイミング
の三つの要素の身体支配力の相互作用が必要で、この過程の中で調整力を養うのは極めて有効である。
また、基本の運動としてボールを取り扱いながら水中での歩・定・投の動きを作ることができ、泳げない児童でも意欲的になり、楽しく学習に参加できると思う。
そこで、ボールを扱いながら基礎的な体力を高め、更に水泳指導に生かされると思われる動きをとり入れ、ボール運動の五つの要素として、指導過程の中に位置づけることにした。(資料2、3参照)
資料2 調整力要素と指導事項
資料3 調整力を高めるボール運動の処方 いっせい指導・班別指導に適用する(教育用ゴムボール4号)