教育福島0039号(1979年(S54)02月)-020page
二、表現製作の喜びをいっそう深く味わわせる授業の展開に努める。
(一) 表現製作の指導に当たっては、感受(発想)、構想、表現(製作)、鑑賞・反省の過程をたいせつにし、それぞれの段階で創造の喜びを味わわせるようくふうする。
(二) 表現内容を豊かにするため、特に感受の段階や、発想の段階において生徒一人一人の個性的なひらめきをたいせつにする。
(三) 絵画及び彫塑表現の指導に当たっては、対象の美しさを感覚によって全体的につかみとる美的直観力を発揮させるとともに、自由な心情をもとに想像をふくらませるなどして、自己表現の喜びを味わわせる。
(四) デザイン及び工芸製作の指導に当たっては、目的や条件を明確には握させたうえで生徒一人一人の発想・構想をたいせつにし(合理性と個性的な感性との統合)、調和のとれた製作の喜びを味わわせる。
また、デザインでは発想や構想の段階を、工芸では製作そのものの段階を重視し、両者を密接に関係づけて活動させる。
(五) 鑑賞の指導に当たっては、表現との密接な関連を図るとととに、生徒自身の自発的な働きをたいせつにして、教師の一方的な説明に偏ることのないよう留意する。
三、施設・設備を計画的に充実し、表現や鑑賞の活動に活用する。
(一) 各内容の指導が効果的に進められるよう、施設・設備を計画的に充実するとともに、その活用に当たっては、事故防止にじゅうぶん留意する。
(二) 学習に必要な材料、用具の購入等は、学校の方針や計画に基づいて行い、教科担任の独断にならないようにする。
(三) 鑑賞資料の整備・充実については、市販の資料にのみ頼らないで、生徒の作品、身近なデザイン・工芸等からその収集に努めるとともに、鑑賞コーナー等を設置して随時活用できるようくふうする。
高等学校
芸術的な能力を伸ばし、情操を豊かにするとともに、創造性に富む個性豊かな人間の形成を目指す。
このため、芸術が常に具体的、かつ実践的な学習を中心にして行われるものであり、芸術的な経験が個人生活や社会生活の中に生かされて「明るく豊かな生活」の営みができる基本的な態度や習慣を養う必要がある。
更に、芸術が「人間性の回復と調和のとれた人間」及び「文化の発達・発展」に寄与することの大きいことを認識することがたいせつである。
美術の学習は、造形的創造活動による美的体験であり、表現と鑑賞の能力を伸ばし、美術の愛好、理解を深めることである。
一、表現や鑑賞学習における学習指導に当たっての研究をいっそう深める。
(一) 目標設定を明確化すること。
目標にそった題材の設定順序がくふうされないと、精選された指導の効果を高めることはできない。そのためにも、どんな教材を、どんな方法で、どの程度学ばせ、どんな諸能力を伸ばすのか、教材の性格や、生徒の学習条件から、適切で具体的な授業の目標を設定しなければならない。
教師の立場からの指導目標と、学習者の到達目標についてもじゅうぶんな検討が必要である。
(二) 学習過程を最適化し、効率化すること。
美術教育を一人一人の学習方法に合わせていくためには、教育活動を分析して組織し直すという仕事をする必要がある。もう一度教えるという活動、伸ばしたい能力ということはどういうことなのか、そして、どういうふうに組織すれば、よりきめの細かい教授=学習ができるのかということの再検討である。
(三) 評価の仕方を研究すること。
美術の評価で最も重視したいのは、評価によって指導計画や指導法の改善、教材の有効性の吟味と修正が行われ、また、生徒に自分の進歩と欠陥を評価させ、激励と動機を与え、その成長発達の姿を客観的にとらえることである。
評価は、作品の結果について行われることが多いが、制作のプロセスを評価することがたいせつである。適切な評価方法を研究し、生徒の学習意欲の向上を図ることに努める必要がある。
(四) 一人一人を伸ばすくふうをすること。
その学習内容にかかわる興味・関心・経験・発達段階・学習方法の習熟度・向上への意欲等をじゅうぶん検討し、学習する分野を個別化し、学習する個人の能率を考え、学習の程度を個別化することが望まれる。従って、個性の多様性に応じた適切な指導や、意欲をかきたてる手だてや助言が研究されなければならない。
(五) 美術の学習効果をあげるための教育機器について研究し、それを計画的に利用すること。
授業に当たり、視聴覚教材の位置づけを明確にし、なんの目的のために使うのかが明らかになっていなくてはならない。その上に立って視聴時間の検討、副次的メディアの用意、機器の特性、操作方法を習得し、視聴覚教材の総合利用が望まれる。