教育福島0041号(1979年(S54)06月)-007page
許運転等が増加しており、学校教育に携わる者ばかりでなく、関係者の心痛の種となっている。
このような現況の中で生徒指導に当たる者としては、児童生徒の問題行動や非行事故に振り回され、後手後手の指導に終始してはならないということである。一人一人の児童生徒の理解を基盤とし、個に応じた適切な指導、助言、援助をとおして児童生徒の自己実現を図る指導、すなわち生徒指導の原点に立ち返り、生徒指導の真のねらいに迫る指導の推進に努めなけなればならないということである。このような指導を進めることによって、学校生活から脱落する児童生徒をなくし、すべての児童生徒が充実した学校生活を送り、ひいては非行にはしることを防止する結果となるのである。
生徒指導の原理原則については、過去何回かにわたって本誌で述べられているので、今回は最近における、児童生徒の問題行動及び非行事故の実態を取り上げ、その指導及び対策について考えてみたい。
一、小中学生の問題行動
1 補導状況
児童生徒の補導状況は表1にみられるように、総数においては減少傾向を示している。内容的には「ぐ犯・不良行為」が減少しているが「刑法犯(犯罪触法)」及び「特別法犯」が増加している。
少年非行(二十歳未満)の中でも、中高校生徒非行の増加が目立っており中学生は全体の二四・九パーセントを占めた。また女子生徒の性非行も急増の傾向がみられる。
非行の要因については、家庭において規律あるしつけをせず、過保護と放任の家庭教育が非行に走らせる結果となっている場合が多く、また最近の少年をとりまく社会環境の悪化が少年非行の誘因となる場合が多いようである。
図1 非行の原因・動機(20歳未満少年)
非行の原因及び動機についてみると、物欲が最も多く、ついで偶発、好奇心によるものが続き、付和雷同、小づかい銭、遊興費等の順となっている。単純な原因動機による非行の多いことがわかる。(図1参照)これらのことから考えられることは、日本経済の高度成長に伴う社会風潮として、精神生活面の充実よりも物質万能の考え方や享楽的な傾向が児童生徒の生活の中に浸透していることが理解できる。また、偶発(そそのかされても含む)や好奇心による率が高いことは、問題傾向をもつ特定の者だけでなく、すべての児童生徒にもちよっとした機会を契機として非行に走る可能性が内包しているものと考えねばならないだろう。このことからも、一人一人の児童生徒の理解に立ったすべての児童生徒を対象とした生徒指導の推進、充実の重要性が痛感される。
2 主なる非行事故の発生状況
表2は主なる非行事故の発生状況を年度別、男女別に示したものである。以下小中学生による非行事故の主なるものについて、その発生状況や傾向を示し考察を加えてみたいと思う。
(1) 刑法犯少年
刑法犯の中では、窃盗が群を抜いて第一位を占めている。万引が窃盗犯全体の四五・七(小四四・三、中四五・七)パーセントを占め断然多く、自転車盗み、空巣ねらい、オートバイ盗み、車上ねらい、自動車盗みの順となっている。小学生では横ばい又は減少傾向を示しているのに対し、中学生では増加又は増加傾向を示している。注目したいのは、好奇心やスリル、冒険を求めてのいわゆる"遊び型非行"といわれる万引、自動車・オートバイ盗みが盗犯の五六パーセントを占めており、社会風
表1 小中学生の補導状況(各年1月1日〜12月31日)
表2 主なる事故の発生状況(各年1月1日〜12月31日)
事故別・年別・小中別 小学校 中学校 昭49 昭50 昭51 昭52 昭53 昭49 昭50 昭51 昭52 昭53 窃盗 400 401 434 401 406 619 549 678 692 851 家出 男子 17 21 29 18 27 45 74 67 69 70 女子 6 13 4 3 4 47 56 63 67 76 計 23 34 33 21 31 92 130 130 136 146 自殺 男子 0 0 0 0 0 2 0 2 3 2 女子 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 計 0 0 0 0 0 4 0 2 3 2 (県警防犯課調べ)