教育福島0041号(1979年(S54)06月)-009page

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かった覚せい剤を用い、しかも性非行と結びついた事故が五十三年度に発生したことである。

3 非行事故の背景及び傾向

児童生徒の非行事故が増加している背景には、児童生徒をとりまく社会環境の悪化、家庭教育機能の低下又は家庭崩壊、個人の価値観の多様化、社会連帯意識の希薄化などがあることがあげられている。また、児童生徒の身体発育は著しい伸びを示しており、かつ情報は児童生徒の周辺にはんらんしている。こうした中に生活する児童生徒は、身体と精神のアンバランスから、身体、学習、交友、性、進路等さまざまな悩みや不安をもち情緒不安定の傾向を示すことが少なくない。

昨年一か年に、防犯少年課の「ヤングテレホンコーナー」に悩みごと相談した小学生は百八十一件、中学生は三百二十八件にのぼった。相談内容は、「異性交際に関するもの」「学業問題に関するもの」が目立って多く、「性に関するもの」「身体的悩みに関するもの」「家族(家庭)問題に関するもの」がついでいる。このことからも児童生徒は種々の悩みや不安をもち、外にはき出すこともできず、一人で思い悩んでいることがわかる。

事故報告書からその特徴的傾向をまとめると次のようになる。

○家出及び窃盗は、中学二、三年生に集中している。

○窃盗は集団によるものが多く、しかも計画的となり、悪質化の傾向がみられる。特に中学生による深夜のバイク・自動車の窃盗と窃盗車を使っての無免許運転が多発しており、さらに増加する傾向がある。

○学業不振児に非行事故を起こしている者が多い。

○経済的理由からの非行は少なく、両親の離婚又は別居、家庭不和等の問題がある場合に非行は多く発生している。

○親の指導監督力の欠如や家庭教育について自信喪失からの放任家庭の子女に発生率が高い。

○中学生の非行の芽ばえが小学生時代に既にみられること、また、高校生の非行には、同一出身中学校の生徒による集団非行の傾向が強く出てきている。

○「たまり場」で相談し計画を立て、深夜から早朝にかけての非行が増加している。

○原因・動機としては、窃盗は物欲、風俗犯は好奇心によることが多い。

○家出、窃盗、無免許運転の事故を起こした児童生徒の性格にかなり共通した点がみられる。意志が弱い、わがままである性格傾向がある。

○家出児童生徒に共通的なものとしては、気が弱い、内向的、付和雷同、自己中心等があげられている。

○窃盗事故を起こしている者の性格傾向も、家出と類似の傾向がみられるが、忘れ物をすることが多い、落ち着きがない、服裂の乱れ等が特徴的である。

○外見上目立つ児童生徒も、目立たない児童生徒のいずれも非行事故を起こしている。また、気が強く、粗暴な行動をとる者、気が弱く内向的で目立たない平凡な児童生徒のいずれも非行に走っていることを考え合わせると、すべての児童生徒に非行の要素が内包されており、ある条件下に立たされると非行に走る可能性じゅうぶんとみなければならないだろう。「まさかあの子が」とか「ごく普通の子が」などの言葉が多く聞かれることも、それを裏づけているように思われる。

二、指導と対策

事故防止のために万全の対策を立てるとともに、事故発生時においても適切な措置をいろうなく講じなければならないことは当然であるが、児童生徒の指導に当たってたいせつなことは、禁止や制限で行動を限定したり日常生活のしつけのみの指導に終わってはならないということである。当該児童生徒とのふれ合いを多くして、学業上または生活上の不適応に対する原因を究明し、継続的治療的指導をすること、すべての領域において、一人一人の理解に基づく自己実現の指導をすることが、ひいては非行の防止につながっていくことを考えなければならない。このような考えから、生徒指導を推進する上で取り上げたい指導と対策について述べてみたい。

1 問題行動の予防

問題の児童生徒が出てしまってからうろたえるのではなく、問題児童生徒を出さないように、より多く予防に力をそそぐことがたいせつである。指導にあたる教師としても何分の一かの時間と労力で指導効果をあげることができることになる。

(1)児童生徒の気持ちがわかってくれる先生がいること。

学校がすべての児童生徒にとって、何らかのかたちで意義あるもの、興味あるものと感ずるようにするためには、一人一人の児童生徒が自分の能力とか、値うちを感じとらせるような扱い方をすることである。教師との間にあたたかい人間関係や結びつきがあることを、児童生徒が感じとったとき、おちこぼれや、脱落する者がなくなっていくのである。

(2)勉強、クラブ治動、スポーツ等の中から、自分の能力が発揮できる経験を具体的にもたせること。

学校のねらいや、教師の考えが、学習成績だけを重視しているような感じを与えないようにしなければならない。どの児童生徒もそれぞれの目標をもって、前向きの姿勢で登校するようにすることがたいせつである。

(3)明るい活気のある空気をかもし出す学級経営につとめること。

 

 

 


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