教育福島0041号(1979年(S54)06月)-010page
(4)遊び、運動、作業などをとおして、児童生徒とより多く接触する機会をもつこと。また、いっしょに考え、話し合い、心を通わせる教育相談の機会を多くもつことも必要である。
(5)児童生徒が興味をもって参加できる意義のある活動の場を与えてやること。
(6)教師は私を尊重して扱ってくれるとの感をもたせる接触のしかたにつとめること。
(7)生徒の扱いに当たって共通理解をはかること。
(8)児童生徒みずからが、自分の長所をみつけ出し、そこに自信のよりどころをもたせる具体的経験の場をもたせるようにすること。
〇一人一人の個性・能力等に、応じた「めやす」を持たせ、それによって成功感や満足感を味あわせる機会を多くしてやること。
○よりよい人間関係ができるように教師が側面から援助してやること。
○他の児童生徒と比較し、劣等感をもたせるようなことを慎むこと。
2 問題行動の対策
保護者に対して家庭教育のあり方についての理解と協力を求め、実践にうつすことは、問題行動をもつ児童生徒の指導対策上欠くことのできない要素である。
○子供の模範となる心構えで行動すること。
欠損家庭や貧困家庭といった家庭的条件よりも、親が誠実な生き方をしているか、人に迷惑をかけないよう努力しているか、社会生治のルールを守っているかなどが、子供の考え方や生活のしかたに強い影響を与えていることを知らせること。
○厳しくすべきところは厳しく指導ししかも感情的にならないで、心の中では真に子供を思っていることをわからせるような指導ができるようにすること。
○禁止や制限による指導は一時的には効果があるが真の指導ではないので自主的活動にまかせるところはまかせるような家庭教育の改善につとめること。
○学業成績中心に子どもを評価しないで、人間としてのよさを認めてやり伸ばすような励しをすること。
○子供を着別することなく、公平な取扱いをすること。
○どういう友達とつきあっているかを知って適切な助言をすること。
○非行化直前の特徹を理解し、それに基づいた観察により、心の変化をいち早くとらえるようにすること。
・学校からの帰りが遅くなる・土日曜日家にいないことが多くなる・勉強しなくなる・金づかいがあらくなる・ことばや態度が不良っぽくなる・女子の場合は化粧や服装に必要以上に気を配る・手紙や電話に敏感になる
以上家庭教育上の対策について述べたが、関係機関については次のようなものが考えられる。
○PTAの補導組織を強化すること。
街頭補導にあたることもたいせつであるが、地域連帯意識をもって児童生徒の助言指導にあたること、生徒指導の問題について情報を提供するなど学校と密接な連携をとりながら児童生徒の指導に当たることが肝要である。
○児童委員、民生委員等に協力を求め学校として手の届かない家庭上の問題について協力を求めること。
家庭及び関係機関に対して学校として要望すべき対策について述べたが、次に学校としてとるべきことについて述べることにする。
○児童生徒をひきつける魅力ある教師となること。-「うしろ姿の教育」ということが言われるように、児童生徒に対する教師の感化力は大きいものがある。児童生徒にとって「自慢できる先生」となるよう努力したいものである。
○児童生徒と教師の関係を教室内に限定することなく、教室以外のところにも多く求めるようにすること。
○劣等感をもっている児童生徒には、学級の係活動やクラブ活動等で役割を与えて活動させ、自信をもたせることによって回復をはかるようにすること。
○中学校においては、適切な進路指導を推進し、進路についての悩み不安を持たせないようにすること。
○日常の観察や教育相談等による児童生徒との接触を多くして小さな変化にも日をとどめ、問題行動の早期発見につとめる努力を怠らないようにすること。
3 治療と矯正
問題行動、問題生徒というと、乱暴であるとか、言動が粗野であるといった表面的に表れる変わった行動面からとらえがちである。ただそういうことだけをみているだけでは診断とはいえない。正しい治療は正しい診断をもとにして行われなければならない。そこで正しい治療をするために、どういう診断をするかが重要なこととなる。
○どうしてそのような行動をとるのか、なぜ不良行為に走るようになったのか、といった表面には表れない内面的なものをよくみること。
○ほんとうの治療は、強くはたらいている心の中にあるものの状態を変えてやることを主たるねらいとすること。
○問題行動を起こしたからといって、悪いことだときめつけたり、押さえつけようとしないで、その原因を明らかにすること。
○問題行動は、自分の欲求が満たされないとき、普通でない方法で充足させようとするためおこる行動であるから、よりよい方法で満たす方法を教え、それが習慣化されるようにすること。