教育福島0041号(1979年(S54)06月)-021page
心身障害児の生徒指導
楽しい休み時間(大笹生養護学校)
養護学校における生徒指導
はじめに
心身障害児の教育は、本来平均的、画一的な取り扱いですむことは極めてまれで、一人一人に応じた教育的な働きかけが重要なことはいうまでもない。それも、日常生活の基本的な行動様式や基礎的な感覚や感情、運動機能の発達の芽ばえをたいせつにし、これに適切に働きかけることなしには成立しない。このようなごく基礎的、基本的な内容を日常の教育活動の中に明確に位置づけることで毎日の授業が成立している。この点で、学習指導と生徒指導とは、教育計画や授業活動の中で判然とわけることは困難でありまた不自然である。むしろ、生徒指導の機能をじゅぶん発揮することが、ふだんの教育活動、授業を効果的にすすめるための必須の要件で、これなしには一人一人の実態に応じた養護教育の実践は困難であるといってもよい。
また、生徒指導の主たるねらいである学校生活の充実は、障害の克服や改善を考えることなしにはなりたたない。しかも心身障害の状況は千差万別といってよいほどであり、本来一般的な姿というものはない。また、一人一人の進路や発達を考えるとき、どの障害もさし迫って改善を必要とするものばかりである。養護、訓練の設定の趣旨、内容とも密接な関連を保ちながら指導をすすめなければならない。
生徒指導は学校教育のわくをかたくなに守るだけでは真に効果的な指導は望めない。家庭や地域社会の指導を積極的にすすめ、児童生徒の実態を見きわめ心情の理解に努めながら相互に協調し、一人一人の心身障害の状態の改善と、より良い発達を願ってすすめなければならない。心身障害児の指導は、単に知識、技能を身につけ理解を深めることで終わるのではなく、一人一人の毎日の生活の充実と障害の改善を願い適切な進路をえがきながらすすめることが大事である。生徒指導は、学校生活の充実を縦軸とし、これをしだいに家庭や地域社会における生活の充実へとつなぐ機能をもになっている。
一、心身障害児の生徒指導の問題
生徒指導の意義と課題、あるいは指導の原理で述べられていることがらと、特殊教育諸学校学習指導要領の教育課程一般に示されている指導上の配慮事項や養護・訓練のねらいや内容とを関連づけてとらえることが、この問題を理解するうえで効果的である。また一方で児童生徒の問題でありながら、他方で指導者の問題であったり、共に生活している人々の問題であったりすることも少なくない。
(一) コミュニケーションの問題
意思の伝達、表現と受容の障害は、生徒指導上もいろいろと障害になり、