教育福島0041号(1979年(S54)06月)-022page

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特に児童生徒の心情を具体的には握するうえで困難をともなう。児童生徒にとっても同様で、援助、助言を適切に求められないという悩みがでてこよう。

1 コミュニケーションの障害のため相互交流への意欲が弱い。

2 コミュニケーションの障害のため教師や家庭の人たちの判断の資料が少なく、本人の心情に即した応じかたがむずかしい。

3 教師、家族、友人がコミュニケーションの意欲を消失していることも少なくない。

4 一人よがりな解釈で行動に移したり、直情的な行動に走りがちである。

(二) 自主性、自律性の問題

心身障害児の養育については、いろいろと困難が予想される。障害に気づくまでに問題が生じ養育に混乱をきたすことも少なくない。コミュニケーションの障害とあいまって、親の養育態度もゆれ動き安定した養育のステップをたどりにくいといわれる。一般的には、過保護か拒否かの両極端にゆれ動くのが家庭の養育態度であるともいわれる。また養育のしかたも直接的で制止的な接し方が多くなりがちで行動形成にもいろいろな影響を及ぼすと予想されるb他律から自律へとたどることのむずかしさが推測される。

1 自主性に乏しく、日常生活を計画的にすすめようとする態度に欠けるところがある。

2 依頼心が強くみずから課題を解決したり、いろいろな習慣を身につけたりする意欲に乏しい。

3 心理的にも動揺しやすいところがあり、動揺すると制止しにくくなる。

4 自制心に乏しく、わがままで攻撃的になりやすかったり、自己のからにとじこもりやすい。

(三) 移動の問題

心身障害児は、いろいろな身体的ハンディキャップもさることながら交流上の障害、施設や交通機関活用上の障害、健常者の障害についての理解不足などから、その行動や移動にいろいろと制限を受けやすい。このことは、経験範囲の拡大への意欲をさまたげるだけでなく、何が可能で何が困難かといった自己の能力の適正な理解を助ける体験が不足することにもなり、適切な要求水準の維持、進路の選択にも支障をきたしやすい。

1 移動したり行動をおこすことに消極的になり内にとじこもりやすい。

2 新たな行動体験をみずから試みようとする意欲に欠けるところがある。

3 なすべき行動、なすべき体験にも消極的になり、他に依頼したりお茶をにごすようになり誤解を受けることもある。

(四) 指導の一貫性の問題

指導の一貫性とそれをささえる指導体制の一貫性の問題がある。児童生徒の生活領域は、学級、学校、家庭、寄宿舎、施設、地域社会といろいろな生活の場があり、一人一人独自の課題を負っている。両親や同胞、保母や指導員、近隣の人々といろいろな大人との交流をくりかえす中で生活している。

1 表面的な障害の状況や苦悩に目をうばわれて、改善への意欲や努力する姿を見落しやすい。

2 家庭や施設との指導の一貫性を保つための共通理解をはかる場や機会が少ない。

3 学校と施設との意見交換、調整がじゅうぶんなまま指導にあたることもある。

4 学校と家庭や施設との交流の機会が少ないため、進路指導などは一方的になりやすい。

(五) その他の問題

家族、同胞、地域社会の健常児との交流や性教育の問題、あるいは世間の人々の偏見など生徒指導上いろいろと考えさせられる問題がある。途中失明の生徒の指導、進行性筋ジストロフィーの生徒の生きがいの指導などときには指導、援助の手をさがしあぐねることもしばしぼであろう。本人や家庭の悩みに真剣に応じ、親身に相談にのり新たな進路の開拓をめざしねばり強く取りくむことがたいせつである。

二、指導体制の充実

このような問題を持つ児童生徒の指導にとって、個々ばらばらに接することはいたずらに混乱をまねくのみで効果は望めない。学校としての一貫性のある指導体制の整備がぜひ必要である。この中で、一人一人の児童生徒の共通理解をはかれる機会と場が適切に確保されることがたいせつである。また、よりきめ細かな指導を維続的にすすめるためには、指導資料の整備と活用のしかたにも意を用いなければならない。さらに生徒理解、指導のための研修の機会と場の設定ということになろうが日常の適切な指導活動にまさる生徒理解、研修の場はない。

(一) 指導体制の整備

体制づくりは適切な情報を収集し、より専門的に理解を深め一貫性のあるしかも効果的な指導をすすめるうえで欠かせないものである。ただ、部や係などが設定されると専門的にはなるが、学級担任との協調に配慮を欠くと一貫性のある効果的な指導がすすめにくくなることもある。

1 一人の児童生徒の、指導や相談に

 

 

 


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