教育福島0041号(1979年(S54)06月)-031page

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先輩役員との交流を通し、生徒会のあり方や行事の進め方をめぐって新役員の自覚と責任はよりたしかなものになる。学校長が参加してくれるのも心強く、昨年の講話は「我が青春」と題して旧制高校における自由と規律についてのものであり、生徒たちの感銘は深いものがあった。

年間通して顧問教師は指導にあたり言うべきことは言うが押しつけにならないように留意した。活動を通して生徒の願いや、考え方、感じ方の理解に努めるとともに、芋煮会などを行い人間的な触れ合いをたいせつにし、顧問教師と生徒役員との信頼関係の樹立に心がけた。

本校における生徒会の最大行事は毎年秋に行われる梅苑祭(文化祭)である。次に簡単に紹介したい。

 

梅苑祭、先輩を向かえての討論会

 

梅苑祭、先輩を向かえての討論会

 

三、梅苑祭の紹介

創立八十周年記念梅苑祭の準備は五月に始まった。全国的に見て文化祭は文化の香りすら望めぬ享楽的なお遊びにおちんとし、本校もその弊を免れることはできなかった。しかしいかにして文化と祭のバランスを考えるか試行錯誤を経ながらもようやくあるべき姿に近づいた感がする。テーマは昨年の「知性ある実践」をふまえ八十周年ということで「伝統と創造との調和」に落ちついた。決定まで実行委員会では十日以上も討議を要した。企画は本部、クラス(全クラス)、クラブ、有志と殺到し、その審査は例年になく厳しく、学校祭として望ましくないものや、創造性の見られぬものは何回も差戻された。お化け屋敷は抽選で二年の一企画にしばられた。パンフレットは文化祭小史や卒業生の思い出も加え五十ページにわたるりっぱなものになった。

八月下旬の期末テストが終わってから九月十五日まで、連日夜九時ころまで企画をにつめ展示や仮装行列の準備と全校の生徒、教師が一体となって驚くべきエネルギーが燃焼した。ダンボールはトラック三台、パネルは市内各所から百二十枚ほど借用した。シンボルタワー「黄金の風車」の製作、小松左京氏の講演、福高の歴史をテーマに先輩と在校生との交流を求めたパネルデスカッション、文化部発表会等、記念祭にふさわしい企画がそろった。展示も充実し、三年のある企画はNHKの若い広場「スタジオ文化祭」に紹介された。

梅苑祭最終日、夕刻から開かれた後夜祭「フィナーレ」で生徒たちはすばらしい上がり盛りを見せた。五人のトランペット奏者による、ファンファーレに始まり、新企画「ミスター福高」の選出、「八十周年の提言」とセレモニーの進行につれ大行事をやり遂げた生徒の頼は上気し体育館はあふれんばかりの熱気に包まれた。式の終わり近くこの年のテーマ曲「さらば青春」を歌いだすころは、全員学年の別なく自然に肩を組み合っていた。そして突然、頭上のクス玉が割れると、興奮はその極に達し三年生が壇上にのばり行事の中心になって活躍した二年生の生徒会長を胴上げするシーンが現出した。まさに青春の感動と連帯が結実したといえよう。その余韻はいつまでも消えることがなかった。

一般生徒の退場後、本部役員を始めとする実行委員会たちが“先生やったやった”と私たちの所に駆け寄り握手し肩を抱き涙する姿ほど美しいものはなかった。生徒を中心に全校の教職員がそれぞれの持場で心をくだき汗した努力が今ここに報われたのである。

四、反省とこれからの課題

思えば創立八十周年、五三総体そして共通一次元年といわれた年、生徒会行事は、役員選挙、スポーツ大会、梅苑祭、予算作成作業、総会等どの一つをとっても失敗は許されなかった。そのつまづきは授業に学校全体の運営にただちにかかわってくるからである。きびしい時間的制約の中で顧問と生徒たちが徹底的に話し合うことによって危機を乗り切ったことがいくつかあった。

今手もとにある生徒会誌「しのぶ草」はそのすべてを語ってくれるだろう。

創立八十周年記念ということで、生徒会行事も大きくなり過ぎた感もする。これからは量的拡大から質的充実をめざして考慮しなければならない。また日常の生徒会活動を重視し、一人一人の願いが反映される開かれた生徒会であることが望まれる。

本校は二期制で本部役員は前期、後期と分かれ二年生がその任を担う。そのため指導もなかなか容易でなく、一人立ちできたと思うと交替期をむかえる。仕事を理解し少しでも早く一人歩きできるよう手順なり、方法を整え、また、生徒会役員や顧問の負担軽減も考え、合理的機能的運営を図るくふうが必要かと思う。

ともあれ顧問教師には、静かな学園づくりの最前線の担い手として、自負と誇りを持ってたえず生徒をみつめ、その労をいとわない地道な努力が望まれる、といったら過言であろうか。

三月、玄関前に生徒会のこの一年の記念として植樹した梅の古木は、その歩みを見守ってくれるに違いない。

 

 

 


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