教育福島0042号(1979年(S54)07月)-008page

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共通理解をもってこれにあたらなければ、その効果が期待できないように、学校は施設、病院の担当者と共通理解をもたない限りこの教育の進歩はない。一人一人の障害児の理解のしかたについては、教育、福祉、医療の立場ではその観点が違う場合もあり、取り扱いの方法も異なることもある。

教育、福祉、医療の協力の重要性は、それぞれの立場で、ことばの上では強調されているが、現実はなかなか困難な問題である。

これをどう克服し、教育、養育、療育の各機能を結集して、障害児の生活を充実し、発達を促進するかが一つの課題である。

 

パーキンスブレラーによる点字学習

 

パーキンスブレラーによる点字学習

 

(3) 交流教育

 

盲、聾、養護学校は、心身障害の程度、種別に合った特別の教育手段を用意し、障害を少しでも軽くし、子供の持っている能力を最大限に伸ばそうとしているのである。

その中で心身に障害をもつ児童生徒が、積極的に社会に参加していく態度を育成するために小・中・高等学校の児童生徒とともに活動する機会を設け、交流をより促進し、人間的な触れ合いを深める必要がある。

このためには、小・中・高等学校の教員はもとより、地域社会の人びとが心身に障害をもつ児童生徒とその教育について、正しい理解を深め、協力を得られるような方策を講じなければならない。

 

3、行政上の諸問題

 

(1) 心身障害児就学指導体制の充実

盲、聾、養護学校対象児の決定は、市町村教育委員会の権限であるが、市町村ではこれを適正にすすめるため、専門家による審議会を設置している。

本県では昨年度県下全市町村に設置されたが、地域差による専門家の不足とか、時間的不足などがあり、その望ましいあり方についてはさらに研究する必要がある。

養護教育関係学校への就学を円滑にすすめるためには、就学指導体制を整備することが欠くことのできない課題であり、法令面での整備もなされたことでもあり、審議会の共同設置等、各地区の実態に見合った機能的な運営体制づくりと急がねばならない。

 

(2) 施設、設備の充実

 

本県では養護学校教育義務制実施に向け、昭和五十四年度までを前期計画として施設、設備の充実に努めてきたが、まだじゅうぶんとはいえない状態である。

したがって、昭和五十五年から昭和六十年までを後期計画として、本県の障害児の実態、地域事情を検討しながら、その整備にあたる必要がある。

 

(3) 訪問教育の充実

 

「すべての子供に教育を」という理念は、最後に在宅の重度重複障害児の教育対策にたどりついたが、本県のような地域条件にあっては、訪問教育の実施にあたってさまざまの隘路がある。

行政としては、訪問教育の位置づけ、指導内容・方法についての指針を明確にすること、専門教師の確保と研修、勤務条件の整備などが当面の課題である。

 

(4) 教員の養成、確保

 

制度や施設としての学校ができてもそれで心身障害児の発達や自立が図れるわけではない。いまさら強調するまでもなく、教員の養成、確保をぬきにして教育の充実を論ずることはできない。

本県でも新採用教員、小・中・高等学校教員と盲・聾・養護学校教員の交流によって人材の確保に努め、研修にも鋭意努力している。

今後とも、どんなに障害の重い子供に出合っても、むしろ障害が重ければ重いほど、障害児の生きがいの創造に意欲を燃やし、それをまた自分自身の生きがいとする教員の養成、確保に努めなければならない。

 

二、養護教育の重点施策と指導の重点

 

(一) 重点目標と施策

 

養護学校教育の義務制施行に伴い、養護教育諸学校(級)へ就学する児童生徒の障害の種別は、ますます多岐多様なものとなり、その程度も一段と重度化してきている。このような障害の多様化・重度化は、心身障害児の就学指導をことさら複雑かつ困難なものとし、さらには、教育課程の編成、学校(学級)経営を、はなはだ困難なものに変えつつある。

しかし、このような変革が認められるにしても、養護教育の基本方針は、能力・特性に応じた弾力的な教育、健常児とともに教育を受ける機会の拡大、早期発見早期教育と生涯教育の重視、

 

 

 


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