教育福島0042号(1979年(S54)07月)-015page
最近、訪問教育の充実が叫ばれているが、今年度は、家庭で訪問指導を受けている児童・生徒数は、五月一日現在、百七名おり、その数は、前年度比三十五名の増である。(表10)
最後に、義務化に伴う教職員の体制はどうであろうか。今年度は、県立が、盲・聾合わせて百七十七名、養護学校が三百八十五名の合計五百六十二名である。国立、市立が合計十名である。県内で、総勢六百七十二名の教職員が、障害児の教育にたずさわっている。特に、今年度は、訪問教育にあたる教員が増員されて、前年度十八名が二十五名になり、ここにも、訪問教育充実に対する本県の施策の一端がうかがわれる。
(二) これからの教育をめざして
1、県立富岡養護学校
(1) 義務制にあたって思うこと
障害児をもつ保護者のみならず、この教育に携わっている人々の多年の念願が結実し、本年四月一日、養護学校教育義務制がスタートした。そして、本校には、在学児童生徒の過半数を占める重度・重複障害児が入学している。
いうまでもなく、重度・重複障害児の実態は多様であり、この教育が容易でないことはもちろんのこと、改めて、「教育とは何か」、「学校とは何か」という原点を問いただされる思いをしている。まして、その教育の方法、内容については、未知、未開拓といってもよく、毎日が悪戦苦闘と試行錯誤の連続ではあるが、実践的研究の積み重ねと跡付けにより、対象児により適合した教育課程を編成し、より適切な指導法を考究していくことが肝要な課題と考えている。また、この課題を果たすことにより、はじめて障害児の就学保障が全うされるのではないだろうか。
また、養護学校教育義務制実施と相まって考えなければならないことは、障害幼児の早期教育と義務教育以後の教育の拡充の問題である。いうなれば、障害児の教育にかかわるライフサイクルの対象である。この対策に十全な保障が得られるとき、真の障害児教育が完成するときであろう。
(2) 保護者(施設)との提携について
本校は、養護学校教育義務制にさきがけて、昨年四月に開校した精神薄弱養護学校で、在学児童生徒は、訪問教育を除き、すべて精神薄弱児施設「東洋学園」の措置児童である。その出身市町村は、県内全域にわたっているため、いきおい保護者との提携の場は希薄となりがちで、その代行者としての東洋学園との提携に大きなウエイトを置いている。
児童福祉施設または医療機関との提携については、養護教育の機会の拡大に伴い、重度・重複障害児の多くが入所している施設等との関係で漸次クローズアップされてきた。そして、全国精神薄弱児施設となんらかのかかわりをもっているという。両者のあいだには、行政所管をはじめ設立主体や理念、組織などの相違により、その提携をすすめるうえで、多種多様な問題がわだかまっている。すなわち、制度面、管理面、指導者の身分面、指導内容、方法等の問題である。
本校においても、東洋学園との提擁についていろいろと腐心しているところであるが、その態様は、大別して二つに分けることができる。
ひとつは、フォーマルな提携組織として、学園と覚え書きを交わし、連絡協議会を設け、児童生徒の教育をすすめるなかで遺漏のないように協議し、さらに具体的な教育活動の展開については、その下部組織として管理、生活指導、行事、進路指導、保護者連絡、保健指導の六つの部会をもち、きめ細かな協議を重ねている。また、ケース会議をもち、児童、生徒一人一人の問題について両者の共通理解に基づく指導の一貫性を図ろうとしている。
他方、インフォーマルな関係の保ち方として、個々の職員の任意性と自発性により、多彩な取り組みを通じラポートを深めているところである。
いずれにしても、いま、施設との提携で大事なことは、目の前にいる重度・重複障害児の真の教育を求めて、場の違いや職種の違いを超えて、両者が直接現場の担い手として、小さなしかも豊富な実践を積み重ね、対象児に必要な教育を多面的に重ね合わせていく努力ではないかと思われる。
カルタであそびながらの楽しいすうじの勉強
2、県立平養護学校
(1) 義務制にあたって思うこと
本校は、肢体不自由児童、生徒を対象とする養護学校である。現在の肢体不自由児の養護学校は、在籍する児童・生徒の実態から、脳性まひ児の養護学校と呼んでも差しつかえないほど脳性まひ児の占める割合が多い。