教育福島0042号(1979年(S54)07月)-018page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

育相談を通して、準備訓練と教育に対する親の適切な理解を経て、小学部に安心して入学できるようにしてきた。

ところが、いざ義務制の段階になってみると、行政的手続きの面で今までの方法がとれず、四月入学になる子が多い。障害幼児が準備訓練なく登校することは非常に困難を伴うものであり、早期教育の必要性からも、就学指導の時期を早めたり、幼稚部を設置し、適切な教育を施すことが必要でああろう。

また本校に入学する子が年々重度化多様化しているが、例えば話しことばのない子、情緒障害を伴う子など個個に応じた指導の内容、指導の方法をはじめ、教材・教具のくふう等についても改善をはかっていかなければならない面が多い。

義務制ということは入学だけの問題でなく、九か年をとおした進学、就職、あるいは施設入所という一生涯にわたる教育の見通しを持たなければならない。本校には高等部が併設されており生活や職業自立訓練など小、中、高と段階的に一貫した教育を行うようにしてきた。

 

(2) 保護者との提携について

 

障害児をもつ親はわが子の治療や指導の方法を求めて病院、施設をまわり解決の糸口を見つけ得ない不安のままで、就学期を迎えることが多い。

本校では不安をもつ親に障害児をどう育てていったらよいか、教育の指針を示し、励ましてやる機会を努めて見つけるようにしている。

例えば、授業参観日の利用はもちろんであるが、それ以外にも学級通信や連絡帳をじゅうぶんに活用したり、必要に応じて相談や懇談の機会を設けたりしながら、担任と保護者が子供の指導のめあてや指導の方法、変容の様子などについて共通理解をもち効果的な指導がすすめられるようにしている。

また養護教諭を中心として精神医との健康相談、脳波検査など正しい医療方法をとるよう指導している。

本校は通学が未自立であったり、しかも遠距離通学の子供が多く、通学指導が大きな問題の一つである。この面については、教師と保護者がそれぞれ当番制で協力し合って指導している。

その他、学校と保護者との共通理解を図る場としてPTA活動も見逃すわけにはいかない。奉仕作業、いもに会、緑陰子供会、他校視察、会報の発行、子供の作品販売もかねたバザーの開催など楽しい行事をもっている。

 

六、訪問教育

 

(一) 訪問教育の歩み

 

昭和二十二年に学校教育法が制定されてからの在宅心身障害児に対する訪問教育は、昭和四十三年に東京都府中市において小学校の元教頭が脳性まひ児を訪問指導したことにはじまるとされている(1)。しかし、昭和五十三年十月二十三日付け、教育課程審議会の、盲学校、聾学校及び養護学校の小学部、中学部及び高等部の教育課程の基準の改善について」(答申)に示されている、二つ以上の障害を併せもつ児童生徒及び障害が重い児童生徒、つまり重複障害者等に関するかぎり、手もとの資料によれば、昭和二十四年、山梨県立盲学校において、盲聾二重障害児の在宅訪問教育をすでに実施していることを知ることができる。ただ、当時は、心身障害児の教育そのものが、盲、聾教育を除いては、創始期にあたり、施策的には啓蒙と振興に力点がおかれ、制度的に発展するまでの礎とはならなかったものと考えられる。

 

(二) 本県の訪問教育

 

1、経過

 

昭和四十三年の調布市における実践に端を発して、三、四年のあいだに、全国的に伝ぱしていった。本県においては、昭和四十九年度からこの制度を採用し、年々対象人員の増加を図ってきている。

制度面から、その経過をみると、昭和四十九年度から昭和五十一年度までは、学籍を付与しないで、就学義務の猶予、免除のまま実施した。昭和五十二年度からは、「福島県在宅心身障害児巡回訪問教育実施要綱」を改正し、対象児童全員に対し、県立郡山養護学校児童として学籍を与えることとした。このことにより、訪問指導員の身分も郡山養護学校職員として、それぞれが在住するもよりの教育事務所(南会津教育事務所を除く)に配置し、所長の指導、監督の下にその任にあたることになった。

 

2、対象者および指導員

 

(1)対象者

昭和五十三年度までを教育事務所ごとにまとめると表10のとおりである。

 

なお、訪問教育を受けて、その後、養護学校や通常の小中学校等に措置換えとなって転学した者について記せば表11のとおりである。

 

表10 年度別訪問教育対象児童生徒数

教育事務所・年度495051525354
県北81616162423
県中44881236
県南000447
会津44481211
相双000449
いわき41212121621
2036405272107

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。