教育福島0042号(1979年(S54)07月)-026page

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教育相談で思うこと

 

赤坂重雄

 

赤坂重雄

 

(一) 職員室にもどって、休憩していると女生徒が私のそばにやって来た。「先生!相談があるんです。」「ほほう相談ね。」なにか異常と思われる感情をこめて私の前をすたすた歩きだした。

二階の相談室にはいると数人の女生徒が私の来るのを待っていた。「先生もすわらせて。」というと「どうぞ。」と言っていすをあけてくれた。「相談というとどんなことかな。」と口火をきると「私たち不満があるんです。」「ほう。不満がかたまっているんですね。」学級内のもめごと等の問題であった。「あなたがたは、不満や不平がある。それをどうしたらよいかわからないので何か教えてもらいたい気持ちになっているんだね。」「この先生に聞くのは無理よ。」「だって私たちの学級のこと知らないでしょう。」「先生はこう思うんだけど、三人よれば文珠の知恵、十五人よればダイヤモンドのアイデアがうかぶじゃないか、そのお手伝いなら先生もできる限りしてあげたいと思うけど。」いろいろ話し合ったところ「いいアイデア。先生だまっていてね。」「先生ありがとうございました。」あっというまもなく生徒たちは相談室から消えて行った。

(二) Sは私が担任である。身なりはかまわない。欠席が多く授業中となりのMとふざけたりして学習態度が悪い。学習に意欲がみられない。他の教科の先生からよく注意をうける。Sと話し合う機会をつくった。S「うん、やる気になれないんだなあ。」「どうして、なにか家とか、学校で頭にきたり不満や不平があったりすると、そういうことがおこりやすいし、学校もいやになるといわれるけれど。」Sは沈黙を続けたが、やがて「家で父ちゃんがみんなからきらわれているんだ。」ということであった。それで、つぎに三者による相談を計画した。

母親に学校に来ていただいて、子供の不満を知らせ保護者が子供を見るめ(考え方、態度など)を変え日常生活の行動様式・勉強・進路等を含めて今後どのように方向を転換させることが望ましいことか。保護者に自覚をしていただき、学校と家庭同一歩調で指導を加えるよう教育相談をした。話し合っているうちに、生徒はにっこりと笑った。相談室を出ていくとき、表情は明るく生き生きしていた。その後のSは以前よりやや落ちつきを増し学習する気になってきている。

(三) (一)は生徒指導部(教育相談係)の教育相談の事例、(二)は学級担任との教育相談の事例である。

現場での教育相談は、1)気軽になんでも相談2)治療技術はダイナミックに、より人間的に3)全職員の協力で治療のふんい気づくりといったねらいが必要である。さらに、人間尊重、適応への資質の信頼などが重じられているが、この考えに根ざした教育相談はそのまま学習技術に生かされなければならないと思う。ただ生徒指導の先生だけにとどまらず学校全体の問題として取り上げなくてはならない。現実の問題として学級担任が問題生徒から手を離したならば、果たしてだれが救うきめ手を持っているといえるだろうか。学級担任がその受け持った生徒の一人一人をたいせつにし親近感をもってその感情を受容し、持っている力をふるに発揮できるように心がけ、明るいふんい気のもとに、気楽になんでも話せる学級づくりの中に教育相談のねらいも生かされてくるのではないだろうか。それがまた、早期発見、早期治療につながり問題生徒の指導の重要なかぎとも考えられる。

 

(矢祭町立矢祭中学校教諭)

 

三者による教育相談

 

三者による教育相談

 

 

 


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