教育福島0042号(1979年(S54)07月)-040page

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第30回

北日本図書館大会から

 

−報告−

 

●図書館コーナー●

 

●図書館コーナー●

 

第三十回北日本図書館大会は、福島市飯坂町の福島市市民センターで、本県の主催のもとに五月二十四・五の両日開かれた。(ちなみに第一回大会は、昭和二十五年七月一日、飯坂町で開催された。三十年前のことである。)参加者は約三百名。(県外百名、県内二百名)図書館関係者の図書館活動に対するなみなみならぬ意欲がうかがわれた。

開会式において図書館事業に対する功労者として、菅野熙、山崎義平、向井勝典(北海道)、小野孝美(盛岡)、庄司ヒサヨ(仙台)の五氏が表彰された。特に菅野氏は、私設文庫に司書二名を雇い、移動図書館車まで購入して読書普及に努め、北海道枝幸町立図書館設立に当たって、これらをそっくり寄付されたことは特筆されるべきものである。

また永年勤続者として五名のかたが、三十年以上勤務、今なお専門職として着実に仕事をされていることは、若い図書館員の歩むべき道を範示してくれているものといえる。

大会はテーマを「住民が期待する図書館奉仕」として、講演、事例発表、分科会の形をとったが、事例発表には各館それぞれくふうをこらした運営内容が発表され、参加者が熱心にメモをとる姿が見られた。

日野市企画財政部長前川恒雄氏(前日野市立図書館長、新しい日本の図書館の先覚者)の講演「行財政の立場から図書館発展の方策を探る」は、まず欧米と日本の図書館の相違は、欧米は自治体ごと図書館を複数もっていて、図書も新鮮でたくさんとりそろえ、市民の中に完全にとけ込んでいる。そして図書館委員が独立していて、独自に図書館税を徴収でき、国の補助に頼らなくても運営できるということである。

日野市立図書館を経営するに当たっていくつかのことを実施したが、もっとも大きなことは、市民のもっている本をもち寄って、みんなで使うことから始めた。すなわち自分たちの図書館なら、自分たちで金を出すという欧米の姿から始めた。図書館の発展は市長並びに図書館員が図書館をどのように認識しているかによって影響される。小さな図書館の力を結集して貸出しサービスに重点を置き、これに徹した。次に図書費の獲得に全力を注ぎ、市民にこびない集書を行い、サービスの重点を子供、次に婦人とした。これはこれからの図書館利用者を増やす要因となり、やがて図書館を支持してくれるものである。これからの図書館経営はこのくらいの長期的展望に立ち、さらにサービスポイントの重点化を図るべきである。

二十パーセントの利用があれば可とすべきである。館長は高い識見と実行の勇気をもって、理想実現のために低い次元のものからやらなければならない。図書館発展の方策は、あるようでいてないものだ。魯迅の「希望とはもともとあるものともいえぬし、ないものともいえない。それは地上の道のようなものである。もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道となるものだ。」という言葉を引用して図書館に対する愛情、市民に対する責任、そしてさまざまなものに耐える勇気をもって図書館経営に当たるべきだと講演し、参加者に多大の感銘と勇気を与えた。

事例発表は図書館例が二つ、公民館から二つ、子供の読書から二つ行われた。多賀城市立図書館は、開館に当たって迷わず日野方式を採用して活発に活動していることが注目された。郡山市図書館は新館建築の構想に当たって、住民との対話を重ね、図書館員の衆知を集めて構想をねり、市民の要望をじゅうぶんに採用して基本構想をかためた。また岩手県胆沢町では、公民館図書室の運営について、位置、スペース、インテリア、新刊購入、職員の専門化等、小さいなりに創意くふうが見られ、本県の公民館関係者には参考となるものが多かった。子供の読書については、公民館、学校においても、真剣に、しかも地道に取り組まれていて図書館の参考となることが多かった。

二日目はこれらの事例発表を中心に分科会を行ったが、熱心な討議が行われ、時間の経過を忘れさすほどであった。

二日間をふりかえって東北地方にも図書館活動の新しい活動が感ぜられ、極めて充実した有意義な大会であった。

 

 

 


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