教育福島0043号(1979年(S54)08月)-008page

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度による制約、資格や検定等も理解させる。「賃金や給与についてはどう考えたらよいか」という観点では、各職業の調査グループの研究をまとめながら、日給や月給、諸手当、住込みと通勤による差等、給与についての一般的な見方、考え方をまとめるようにする。

上級学校についても同様で、高等学校そのものを単独にとりあげず、「どんな内容の学科や訓練がなされるのか」「卒業後の資格はどうなるのか」というような観点から、学校や訓練機関について調べさせる。進学者にも、就職者にも、家事従事者にも共通に必要な基礎的なものでなければならない。進学者とか就職者のためとかに片寄らない、進路を考える場合の基礎的なものでなければならないし、一般的で多面的なものの見方を指導しなければならない。

3 第三学年の段階

二年生の一般的な研究の上に立って自己の希望進路について深く調査研究し、私の進路をまとめさせる。将来の希望職業の研究はもちろん、勉学向上の道についても、就職、進学の希望いかんを問わず研究させる。

4 自発的活動助長のくふう

自発的活動を導く学級指導の性格からも、教師中心の知識提供の授業でなく、グループによる調査や見学、統計処理や図表化、進路レポートの作成、課題研究等の活動を計画するようにする。教科指導的な授業の場合であっても、生徒が自主的にこれを受容し、主体的に考えるように指導する。

進路等で指導する知識理解は、生徒個々のもつ願望や情緒の状態によって与える情報も受けとり方が違ってくる。したがって、生徒個々の希望や疑問を常にとらえることにつとめ、反応を確かめつつ進めることがたいせつである。そのためには、指導の要所に作文や感想を書かせることや、進路ノートの記述からは握することに努める。教育相談は、進路指導だけのものでないが特にたいせつな活動である。個別の話し合いはもちろんであるが、小集団のカウンセリングは効果が高い。進学小グループ、就職小グループごとでの飾らない話し合いが行われることが望ましい。

 

七、 進路の選択

 

進路の選択と決定に関する指導は、個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うとする中学校教育の目標に直接指向するものとして進路指導の中心的な仕事である。しかし、 一般的な選択の原則を教えればすむというものではなく、そこにはいろいろな難解な問題がある。

●教師、生徒間の温かい心の融れ合いを深め、生徒が気軽に進路について、相談できる体制を学校としてつくりあげる必要がある。

●生徒の学習や進路に対する不安や悩みの実態を的確にとらえ、それに対応できる学級指導の内容に改めたり、進路相談のあり方についてじゅうぶんな配慮が必要である。

●生徒の自己理解についての指導を強化し、一人一人の生徒の適性や興味・関心を見出し、理解を深める必要がある。単純な有名校指向の希望でなく、自己の適性や将来の職業との関連において進学校が適切に選択できるよう、自己理解の指導につとめる必要がある。

●志望校の変更に当たっては、生徒の納得を得させる指導がたいせつである。高校生に対するアンケート調査をみると「はじめから現在の学校・学科に入りたかった」とする第一志望校に入った比率は低く、実業高校においては特に低いことがわかる。

●生徒の進路決定に際して、保護者は学歴偏重にとらわれたり、みえや欲目で進める場合があるので、子供の能力・適性をよくは握するなど学校と家庭との連携をさらに密にし、正しい進路選択についての保護者の理解を深める必要がある。

●将来のことについて未知、未経験な生徒まかせの希望優先だけでなく、目前の進学問題と将来の職業や生き方の問題をどう関連させて指導するかがたいせつである。そのためには学業成績だけでなく、本人の特性をじゅうぶん検討するために必要な資料を準備する必要がある。

●進学者にとっても、職業に関する情報がどのような意味と役割をもっているかをじゅうぶん理解させるような指導が望まれる。そのためにも適切な資料の収集が必要になる。

 

進路指導実践上の問題点とその改善

岩瀬郡天栄村立天栄中学校

諸橋恒夫

 

一、 はじめに

 

昨年六月、筑波大学で開かれた進路指導講座(中央講座)に出席し、六日間の研修をとおして、進路指導の課題・進路指導の校内体制と進路指導主事の役割等の講義を受け、学級における進路指導の進め方等の演習に参加した。

今まで進めてきた進路指導のあいまいさを反省し、多忙な日常活動の中において、真しな研修と自己変革の努力をする中で、ともによりよい生き方を模さくすることの決意が持てたことは大きな収穫であった。

さて、進路指導を実践しようとするとき、共通理解のむずかしさ、協力指導体制の確立のむずかしさにぶつかり、情報収集能力の限界にぶつかる。また本音とたてまえが大きな壁になっている等、困難な問題が山積しているのが現状である。

しかし、高校への進学率が九十二パーセント台に突入し、その大半が自己の将来の職業について長期的展望の上に立ち、それに必要な適性や能力をじゅうぶん考慮しての進路選択であったかと思うと、はなはだ疑問を持たざるを得ない。

中学卒業者の離職率が三年間に四十

 

 

 


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