教育福島0043号(1979年(S54)08月)-023page
後、職場見学、作業学習をより多く取り入れ、生産とそして「できる」という喜びをもっともっと体験させることが必要である。
(三) 本年度の進路指導計画
「進路の決定は卒業時だけで問題でなく、それ以前の教育、特に養護学校においては、その全教育活動そのものである」ことを全職員が確認し、今年度の重点目標を次のように設定した。
1、 日常の指導と観察の記録を累積し、生徒一人一人の実態のは握につとめる。
2、 生徒の発達段階に即して適切な進路指導をすすめるために、進路にかかわる資料の収集につとめる。
3、 適性の発見と、定着可能な職場の開拓につとめるとともに、成人施設の内容についての学習をすすめる。
4、 保護者、施設(学園)、職業安定所、担任との連絡を密にして計画的にすすめる。
この重点目標を軌道に乗せ充実させていくために、年間計画を立案した。進路相談四回、職場見学二回、職適検査、その他学園の指導員との話し合い等一連の活動をとおし、社会適応のため全職員が一丸となって進路指導に当たっている。
今、太陽の国に新しい収容施設の建設がすすめられている。その建設の大きな響きが、我々の学校教育の励ましの声のように感じ、毎日の教育実践に全力で取りくんでいる。
職場見学(郡山養護学校)
三、 肢体不自由養護学校の進路指導
福島県立郡山養護学校
(一) 本校の現況
本校の生徒は、通学生、寄宿舎生、医療施設生とわかれており、小学部から高等部までの十二年間同一校で教育を受ける。
1、 生徒の実態
肢体不自由のほか、少数ながら言語障害、知能障害をあわせてもっておる生徒もおり、希望に満ちた進路を得ることが困難な場合もある。
2、 進路状況
中学部卒業生はほとんど本校高等部へ進学する。高等部卒業生は進学、就職のほか、福祉施設に入所するもの、または進路の見通しのつかないまま家庭保護となるものなど様々である。
3、 高等部卒業生の進路
前年度卒業生のうち約半数は就職できた。他は、職業訓練校、各種学校、更生指導所、授産施設、家事手伝いとなっている。
4、 前年度の反省
前年度はやむなく家庭保護となる生徒は一人もなく、全員希望どおりの進路を得ることができた。これは職業安定所の担当者の熱心な努力に負うところが大である。
また、身体障害者雇用促進法が改正され、企業や行政が雇用に積極的になっている点もよい影響をもたらした。
(二) 本年度の重点
これまで、学校教育全領域にわたり生徒が将来どう生きてゆくのが最も意義深いことであるのかという点を基本として進路指導をすすめてきた。ホームルームにおいてもより多くの時間を進路指導にあてるなど、進路相談と進路の開拓につとめてきた。
しかし、小学部から高等部まで寄宿舎、医療施設から通学する生活で、受験戦争・就職難など他人事のように過しているためか、高等部卒業学年になっての進路相談のおり、自己の能力を過大評価し、進学・就職に大きな期待をもってのぞみ、失望する者も見うけられる。そこで、今年の重点事項を、「学活、ホームルームにおける進路指導の時間を確保、充実し、特に自己の障害、特性、家庭環境についての理解をいっそう深める。」こととして努力していきたい。
終わりに
期待通り就職でき、希望どおり進学できたということで進路指導がすべて良しということにはならない。それは、本人や家庭にとっては新たな進路の第一歩であろう。進路指導の成果はその後にあらわれてくる。障害者にとっては将来の生きがいを何に見いだしたらよいかという課題をぬきにした進路は考えられない。将来とも比較的健康にすごせる者から、二十歳前に人生を終える者まで在学する。また、今後重症心身障害児は常に在学しようし、医療施設の中で生涯を閉じる者も常時在学するであろう。いずれにせよ、今後とも日常の教育活動をとおし、一人一人の生きがいを見つけつくりだす過程で本人や家族とともにより良い進路を真剣にさぐっていかなければなるまい。