教育福島0044号(1979年(S54)09月)-031page
四、指導の経過
指導の経過を 表1「運動機能向上のために」 表2「コミュニケーション成立のために」にまとめた。しかし指導の過程は必ずしも表の順序に従ったものではない。特に重度・重複障害児の場合、健常児のような段階的発達が困難である。常にあらゆる可能性を考え、表に示した学習内容を重複してくり返し指導した。ただ「トランポリンにのせる」という内容は、自閉的傾向の強い本児と教師の人間関係や指導のきっかけをつかむために最初にとりあげ、一年間継続した。トランポリンの上で、人とのかかわりがとれるようになった後、トランポリンにのせる時間を次第に減らし、少しずつ他の学習内容を導入した。
五、考察
入学当初、常同行動と自傷行為をくり返すだけの本児からは想像もできないようなさまざまな変容があった。本児は、指導開始後六か月目から目だって変化した。この時期は人とのかかわりがいくらかとれてきたころである。その中でつかまり立ち、つかまり歩きを行ったからこそ非常に速く大きな変化が現れたと考えられる。 このことは教師と子供の人間関係が教育の根本になることを教えているものと思う。今後人とのかかわりをより確かなものとし、精神的満足感を与える中で持っている能力をじゅうぶん発揮させたい。次に自発性の問題である。どのような子供であってもみずからやろうとする気持ちを育てることに、刈り、学習もより効果的になる。あらゆる方法で自発性を呼びおこすことも重要だと考える。
また本児は、指導開始後十一か月目に大発作をおこした。その後抗けいれん剤を服用している。このためかこのところ生活全般にわたり活動が低下している。学習時は以前ほど活発でなくなり特に体を動かすことをいやがる。今後このような状態が続くものと考えられるが、医師と密接な連絡のもとに可能な限り、現在までの指導計画にのせ喜びを感じさせるような方法で指導を続けていきたい。
心のかよう指導
表1 運動機能向上のために
表2 コミニュケーション成立のために