教育福島0045号(1979年(S54)10月)-006page
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特集
心身障害児のよりよい発達をめざして 養護教育課
養護学校教育の対象児が重度化し、多様化の傾向を示している現在、いろいろな面から養護教育を考えていかなければならないと思う。
毎日、それぞれの学校で、授業実践がなされているわけであるが、「すぐ忘れてしまう。」とか、「やさしくかみくだいて、なんべんも教えたのに−。」ということばをよく聞く。
児童生徒が、将来社会人として生活していくためのものの見方、考え方などの力を身につけさせる努力を各教師が、あらゆる場面でやっている。特に日々の授業で、児童生徒が意欲をもって学習に参加し、意見を述べる授業の展開をめざして、先生がたが苦労しているところであるが、一人一人の子供たちの指導効果をあげるためには、学習指導面でさらに考慮していく必要があろう。
児童生徒とのいろいろな教育的かかわりをもっていく際に、「あれもできない、これもだめ。」というような否定的な見方からは、なんら良い方法は出てこない。児童生徒の実態を適切にとらえる努力と同時に、それに合った指導方法を講じていくことがたいせつである。そして、教師の児童生徒に対する接触のあり方としては、むしろ、
「これならできる。」とか、「ここからはじめればよい。」というような基本姿勢が要請されてくる。
以下に、対象児の的確な理解とそれに対応した指導仮説、評価等のあり方に関して、特に配慮すべき事項をあげてみた。
一、、心身障害児教育の配慮点
(一) 児童生徒の実態は握について
子供の能力を考えずに、不用意にある素材を教師が与えたとすれば、子供がそれに取り組もうとしないのは明白なことである。したがって、それがどのようにりっぱな教育方法であったとしても、障害児の実態に合っていなければ、効果はない。また、子供の学習が生き生きと展開できるかどうかを決める重要な手がかりは、素材の扱いとともに、子供の現在の能力を的確には握して取り組むことであろう。
ポイントとして、四点をあげてみる。
(1) 子供の実態をどういう観点でとらえるか。
子供の興味や関心の方向、諸能力や学習の見通し、一人一人の学びとり方の傾向等を知る。
(2) 実態に即して、どういう指導計画(仮説)をたてるか。
子供の思考の仕方や、どのような特性があるかなどを明らかにして、子供の生活意識の変化、発展の方向にそって位置づける。
(3) 指導計画に対応してどういう教材(内容)、教具を計画するか。
能力差のある集団が、一つの方向で学習できるものや、問題場面がおこりやすいものや、学習意欲の持続性のあるもの等を準備する。
(4) 具体的活動として、なにをどう扱うか。
学習内容として、子供に「なにを」獲得させるのかがたいせつである。そして、学習の中で、指導の順序やねらいの高低を考慮する。
(二) コミュニケーションについて
知的機能の現れとして、最も顕著なものは、言語である。言語以前の非言語によるコミュニケーション−泣き声なん喃語、身ぶりなどは、精神薄弱児では長い期間続く場合がある。このように言語と知能は、深い関係をもち、言語的なコミュニケーションが可能になってくるとさらにいっそう深い相関をもつようになる。
障害児は、自分の意志、願望がじゅうぶん伝えられない。自分の行動について釈明できない、命令、仮定、理由などの表現ができにくいため、抽象的な思考力や友だちとの社会性において大きな影響をうけることになる。
したがって、障害児のコミュニケーションに関しては、広い意味での言語行動の発達という視点にたち、対象児のコミュニケーション行動をとらえていく必要があると考えられる。
(1) 循環反応とシェマの協応
例えば、赤ん坊が壁にボールをあてる。そのボールがもどってくる。そのようなくり返し行動が、将来人間とのかかわりと結びついていく。
(2) バーバル・コミュニケーション
音声によるコミュニケーション。
(「聴覚−発声連合」)
(3) ノンバーバル・コミュニケーション
身ぶりや表情のように音声によらないコミュニケーション。
(「聴覚−運動連合」)
(4) 対人行動
人へのかかわり具合。
(5) 対物行動
ものへのかかわり具合。
(6) 指さし行動
名詞をいうかわりに、そのものを指し示す。
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