教育福島0045号(1979年(S54)10月)-013page

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特集 学習指導の展開

 

に直接あたることはほとんどなく、なにかというとトラの巻に頼る生徒が大半である。そこで、自分の力だけで調べることにより漢文(唐詩)に親しむ態度を養うことに主眼をおく。

3、指導の形態 班学習発表形態としOHPを活用する。

4、時数配分

第一時〜第三時 唐詩について説明。

(通釈作業との関連で「起承転結」は念入りに。唐詩史概略もここで扱った。)第一詩「辛夷鳩」を読み、学習のしかた、TP化のしかたなどについて共通理解を図った。(ともにOHP使用の講義中心)次に班編成。学習作業の要点をプリントして配り周知徹底。

第四時〜第五時 班作業。一班四、五名で十班編成。一班一詩担当。ほとんどの班は時間内で終わらずTP化などはどの班も放課後か帰宅後の作業となった。

第六時〜第十時 各班発表。一時間に二班二詩ずつ。発表の要項は次のとおり。1)朗読2)語釈3)通釈4)情景状態・心情は握 5)主題 6)口語自由詩、イメージ画、感想発表このあと、質疑応答、教師の補説を行った。

5、班学習作業の要点(プリントして配布したもの)

(1) 語句の意味の整理

(2) 全詩の通釈

(3) 押韻、対句などの指摘

(4) (A) 情景−詩に描かれている情景、風景、時間、季節、場所(5WlH…いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どうしているのか、を明確に)

(B) 状態−作者の現在の状態、境遇など。

(C) 心情−○自然(対象物)に対して作者はどういう心情でむかっているか。

○詩にこめられている作者の心情は。

(正しくか条書きする。必要とあれば図式も用いる。)

(5) 詩の主題を端的な短いことばで表す。

(6) 作者について説明する。

(7) 読んでの感想文を短く書く。

(8) 理解した漢詩のイメージを、現代口語自由詩に表現してみる。

(9) イメージを絵にする。

 

三、授業を振り返って

 

作業授業は活発で楽しいものとなった。漢語の意味を辞書で調べ、まず通釈するのだが、これがなかなか楽しい。数多くの辞書にあたる楽しみもこんな時にはある。

「渭城朝雨◆輕塵」の「軽塵」で、辞書の助けなく「軽いちり」とわかっている者、「軽いちりやごみ」と確認してノートにとる者、「軽い土ぼこり」を自分の辞書だけに発見して喜ぶ者。そこで、春先の黄砂現象、黄土地帯などについて調べるよう、さらにアドバイスしてやる。夏の砂ぼこりの経験、(樹木を白くしている)はだれもが持っているから、生徒のイメージは鮮明になっていくようだ。

「遥憐小皃女 未解憶長安」の「憐」「何日平胡虜 良人罷遠征」の「良人」など、辞書で調べないできのいい生徒が頭をかくことになった。

「洛陽城裏見秋風」では、班全員「秋風を見る」とすましている。「秋風は見えるのかなあ」と生徒の感性に逆らいかねないささやきをしてみる。班員はまた動き始める。ついでに「見秋風」が洛陽城裏においてであったことの意味(効果一についてもともに考えてみる。山中の場合とは違った意味での孤独感、人恋しさ、強い望郷の念などがわかってくるようだ。そして「欲作家書意萬重」以下の心情も自然につかめるようだ。

もっとも見逃しもある。肝心の研究授業で「故郷今夜思千里」を発表者が「遠く離れた故郷では私の身の上を今夜も思っていてくれるだろうか。」とやったのを、そのままにしておいて、あとの反省会の時、指摘されたりもした。このような大きな間違いはともかく、詩のイメージ形成にさして影響を及ぼさないささいな間違いはあまりこだわらず気付いた点は指摘していったが生徒がとらえ得た実感を大事にし、自由に発表させるように心がけた。

発表は一時間に二班二詩、一班二十分程度ということで、作業、TP化への整理に随分時間を要した割には発表時間が少なく、全体討議の時間も少なかったのは反省点である。発表班以外の生徒は投影されたものをノートするのに忙しかった。それでも、鑑賞、感想、絵、口語訳詩などのときは、笑い、感心し、質問し合って楽しい授業が展開できたように思う。

参考までに、生徒の口語訳詩の一つを掲げておきたい。

 

送友人 李白

 

青山横北郭 白水達東城

 

此地一為別 孤蓬萬里征

 

浮雲游子意 落日故人情

 

揮手自茲去 蕭蕭班馬鳴

 

別れ

 

この土地で

一たび

あなたと別れを告げたなら

あなたはもう

風に吹かれる根なし蓬のように

さすらいの旅に出ていくでしょう

 

浮き雲の定めなさは

 

 

 


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