教育福島0045号(1979年(S54)10月)-017page
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てきた。ここでは、一時間の授業の中における問題意識のもたせ方の違いと学習の到達度との関係についての実践例を述べる。生徒の学習意欲を盛り上げることは容易ではないが、生徒に本時の目標を具体的な行動目標として、しっかり持たせると一時間の授業の中で生徒の動きもより活発になる。生徒自身も授業を終わって目標に到達した満足感を得られる。そこで、二つの学級を選び、一方をA群(実験群)、他方をB群(統制群)とした。A群には特に生徒全員に学習の目的意識をもたせるため、問題は握の段階で本時の目標をより具体的な行動目標として提示した。ここでは、「イオンの価数」の教材を指導例とする。A群には、問題は握に約十三分ほどかけた。本時の行動目標である「硫酸アルミニウムの化学式を書くことができる」を生徒自身の中に目的意識として定着させることを考えた。一つの方法として、1) 化学式からなにを連想するか。2) 知っている化学式にはどんなものがあるか。各列ごとに前から発表させ、授業への全員参加をめざすためにも発表できない生徒には後にまた順番がまわるようにした。こうして本時の行動目標をじゅうぶんにつかませる努力をした。この場合、教師は生徒の発表をたいせつにする意味で内容を簡単に黒板にメモをとる。内容が適切でない場合であってもそれなりに認めていく配慮もした。一方B群の方は、本時の目標を「イオンの記号と価数を知り、化学式の決定を理解する」といったごく一般的な目標にし、ただちに授業にのぞんだ。A群B群とも学習内容は同じであるが、B群は授業の終わりに十分ほど残る時間を化学式の書き方の問題演習にあてることにした。なお指導のちがいを指導案に示してある。(次ぺージ参照)
実践結果、事前テストを実施したA群、B群に前述のような授業展開を二時間進めた後、事後テスト、は持テストを実施した。は持テストは事後テスト二週間後に行った。その結果をグラフに表すと資料のようになる。このグラフは縦軸にグループの平均得点をとった。(グループとは、A・B群の事前テストで同得点を示した生徒をいう)横軸には事前、事後、は持テストの順にとり、1)から4)に移るに従って、事前テストのグループ平均得点が上位群になるようにした。この結果からA群、B群を比較すると、事前テストで下位の得点者の事後、は持テストの得点の差は大きくなっているが、上位の得点者はその差が小さくなっている。このことから、上位の生徒にとっては一般的な本時の目標であっても、授業に対して、みずから進んで目的意識を持ち、学習内容を見通していくことができるが、下位の生徒には、いろいろの手だてをもとに目的意識をもたせ、具体的行動目標を与えることにより到達度の達成の度合を、より高くすることができるのではないかと考える。結局、問題は握の段階で生徒全員に授業の目的意識をもたせ、行動目標をより具体的に与え、授業後に、みずからが達成した満足感を得られるように指導することによって、下位の生徒から上位の生徒までじゅうぶんな学習効果を上げることができると思われる。なお、このグラフで、は持テストの結果がどの得点者の場合も高くなっているのは、この学習内容が、単元のはじめであったので学習が系統的に進み、関連性があったためである。このような実践結果から、今後課題を出す場合においても具体的に目標を与え、目的意識を高めさせ、その課題をどのように授業に生かしていくかなど、効果あるものの累積から、より本校の生徒の実態にあった学習効果の上がる授業を求めていきたい。
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実験も真剣に(二本松工)
資料 二学級内における学習到達度の変化
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注
−○−A群(実験群)
…●…B群(統制群)
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