教育福島0045号(1979年(S54)10月)-024page
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特集
音楽
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鑑賞指導について
高校段階の生徒は、心身ともに著しい発達をとげる時代であり、特に直感力、感受性、創造的な表現能力、および鑑賞能力等が格段に伸長する時代であるといわれている。
県下の高等学校をみわたしたとき、音楽のそれぞれの分野で積極的な指導活動をしている教師が多いが、今回は鑑賞指導に取り組み成果をあげている教師の意見と実践例を紹介したい。
鑑賞指導の一事例
郡山女子高等学校教諭
鵜川 敬史
一、はじめに
毎年、私は生徒の実態をは握するために新入生を対象にアンケート調査を試みているが、今年度は特に音楽の種々の領域から好むものを選ばせたところ、次のような結果が得られた。
鑑賞 四十一・五パーセント
歌唱 三十七・七パーセント
器楽 十四・六パーセント
音楽史 三・九パーセント
創作 二・三パーセント
このことから、生徒たちは鑑賞をしこうしていることがわかる。またそれを裏づけるようにステレオの所有率が七十七パーセントであり、ラジオカセットにいたっては八十パーセント以上で、音楽機器に関する普及率は高かった。しかしレコードの保有枚数は、多く持っている者も例外的にはあったが、次のような結果であった。
調査対象生徒数 九十八名
保有枚数
クラシック 二枚 九名
クラシック 一枚 六名
ポピュラー 十五枚以上 六名
ポピュラー 二枚 六名
このようなことから高価なレコードを購入して聴くことより、ラジオ放送等で楽しんでいるのが実情のようである。したがって生徒の考えている鑑賞は、ばく然と音楽を聴くということであり、前のアンケート調査の中味は、音楽鑑賞の教育的意義からみれば、かけ離れたものであるように考えられる。しかし今の生徒たちは音楽を聴くことに関心を示していることは事実である。私は生徒一人一人が感動をもって音楽を鑑賞する心を育てるために種々くふうをこらして今日に至った。
またアンケート調査によると「歌唱」を好むことがわかる。このことは授業でもまた必修クラブの活動の中でもうかがえる。「歌う」ということは、人間の本性の中に潜在するものであるからであろうが、種々な音楽活動の礎は「歌う」ことが基底となっており、このことによって培われた能力が、音楽の諸活動の中に活用されるものであることは疑いのないことである。例えば本校の合唱団指導をとおして感ずることであるが、高度な内容を持つ曲や高い技術を必要とするものでも、生徒たちは真剣に取り組み、感動を持って歌いあげている。私がうっかり手をぬいたりするとたちまち拒絶反応、不信の表情が生徒の顔にはしる。指導に当たる私自身も楽曲のアナリーゼを徹底的に行うことはもちろんのこと、細部にわたる指揮法の研究も懸命に勉強することになる。また時々催す鑑賞会も、心で音楽を感じとっている。
このようなことが毎日の教育活動の中でも実現できるよう、目標を明確にし、適切な教材の提示を図りながら指導していきたい。よりよい鑑賞指導のために、ささやかではあるが私の指導例をのべてみたい。
二、鑑賞指導について
私が鑑賞指導を本格的に取り上げているのは三年生の授業で、音楽史と併用させて扱っている。そして単なる音楽だけの鑑賞におち入ることをさけるよう配慮している。
三年になると世界史も学習してきており、それらの中から特に文化史的な面より音楽を概観しポイントを設定し指導しているわけである。したがって毎時間の授業には必ずプリントを作成している。その内容が音楽にとどまらないので、そのための資料収集には多くの時間が費やされる。ときにはおもわぬところがら長い間、探し求めていたものが見つけだされるときがある。「資料不足を嘆く前に収集の努力を」と私は考える。
ところで鑑賞というとき、レコードをただ聞かせることが多いように思う。鑑賞指導には、その楽曲に関しての知識や、情景等を含めて音楽の美しさを感じとらせることに心をくだくことが必要である。そのためには前述のように音楽の背景にあるものを含めて豊富な生きた資料が必要なのである。
三、鑑賞指導例(その一)
古典派の作曲家「ハイドン」の作品を鑑賞させるとき、音楽を形態や種類楽器などの多角的な面から味わわせることにしている。それとともに当時の時代的な特徴、地域的な特色等にふれることはハイドンを理解させるうえで重要で、そのためには、ハイドンの仕えたエステルハーツイ侯の王宮やその室内および宮廷生活、当時のオーケストラ等までスライドでふれることにし
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