教育福島0045号(1979年(S54)10月)-025page

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特集 学習指導の展開

 

ている。また、各時代の宗教曲を鑑賞させる場合、私は必ずヨーロッパ各地の壮大な教会の建築様式と教会内部の壁画、彫刻、美しい調和をみせるオルガン等を鑑賞させる。美しい陽の光がステンドグラスをとおして流れる中で、ドームいっぱいに響きわたるオルガンと合唱の響きは、生徒の心を感動の世界へといざなうのである。

私は以前「グレゴリオ聖歌」を取り上げたことがあった。そのときは音のみの鑑賞であったが、生徒たちの感想は私の意図していたものとは遠くかけ離れたものであった。それ以来、鑑賞の時間には、前にもふれたように、音楽の背景となっている種々の要素、すなわち社会状勢、歴史の流れ、文化等のより多くの面を取り上げるよう配慮している。

すなわち「グレゴリオ聖歌」を鑑賞させる場合、まず世界史を概観することから始め、つづいて中世文化の特質、イエスの一生、キリスト教の成立とその発展、教会の建築様式、中世の絵画、中世人の生活、ネウマ譜の解読、グレゴリオ聖歌の歴史と特色等数十枚のカラースライド及び解説のテープを作成し、授業に取り入れてみたところ予想以上の成果が得られた。

近代、現代の音楽および日本の伝統音楽の鑑賞指導においては、音楽観や感受性を育てる意味から前述のようなくふうがいっそう必要になってくるのではないだろうか。

 

四、鑑賞指導例について(その二)

 

オペラを授業で取り扱う場合、その一部分の鑑賞で終わることが通常の姿である。総合芸術といわれるオペラの真の姿をいかにして生徒に伝えるか、長い間私は考え続けた。ビデオ等によて鑑賞することは容易なことであるが長時間にわたって展開するオペラを短時間にまとめるとともに、生徒一人一人がオペラの素晴らしさを心から感じとってくれるよう種々試みた結果、スライドの作成となった。

私はまず、世界の代表的なオペラ劇場のスライド化を図った。建物の外観および舞台、オーケストラボックス、観客席等の劇場内部のあらゆるものを収集した。これらを観賞させると、我が国にはまだオペラ劇場のないのを残念がる声が生徒の中から必ずといってよいくらいきかれた。

オペラのスライド化であるが、オペラの特色、音楽、ストーリー等にじゅうぶん配慮して、動きのある場面場面を絵にすることにした。

そこにオペラの音楽の特に重要な部分を中心にテープに入れ、そこに私の解説を組み込んだ。

この試みは、今までこの種の音楽にほとんど関心を示さなかった生徒たちが終了時にはアンコールを要求し、また次時をまちこがれる声が多くあがり私を感激させた。

さてこれからの課題は、美しい絵の制作と、解説の吹き込みである。オペラの中から適当な場面を選び絵にすることは、素人の私にとっては容易なことではない。悲劇が喜劇に終わることもときにはあった。しかしちせつな絵とナレーションであっても今までと違った真剣な態度で鑑賞する生徒たちのために種々改善を図っていきたいと思う。

 

五、むすび

 

鑑賞指導において一番大事なことは「生徒一人一人が心で音楽を受けとめているか」ということではないだろうか。生徒がじっくりと音楽を聞こうとする心を育てあげることは音楽教育の最も重要なことであろう。私は音楽を愛する生徒を育成するために、広い視野に立ってものを見つめ、教育の実践の場においては、生徒の実態をは握しじゅうぶんに指導計画を練り、学習意欲を高める楽しい授業づくりに、また生徒一人一人が感動をもってうけとめてくれる授業づくりに努力を積み重ねていきたいと考えている。

 

郡山女子高

▲楽しい合宿とコンクール風景

 

▲楽しい合宿とコンクール風景

▲楽しい合宿とコンクール風景

 

 

 


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