教育福島0046号(1979年(S54)11月)-030page

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研究実践紹介

 

商業科における習熟度別

 

学習指導について

 

福島県立西会津高等学校教諭 筒井一夫

 

一、動機づけと新教育課程

 

教師は、教育活動の中でどうすれば生徒がよく学習するようになるか、また、どうすれば生徒が実習や作業に精根をこめるようになるか。という問題絶えず考えながら授業についてのくふう改善を凝らしながら実践活動をしている。

昭和五十三年八月三十日に告示された高等学校学習指導要領に示されている「習熟の程度などに応じて弾力的な学級の編成を工夫するなど適切な配慮」による学習指導法は、多様化した生徒たちに学習の動機づけを行う上できわめて有効な方法だと考えられる。

この方法を採用して学習した場合の最大の利点は、まず第一に生徒個人が自己の能力を基準にして目標をは握しゃすいこと。第二にその目標を達成したとき、大きな満足感が得られ、さらにその行動を持続しようとする動機づけがなされることである。

多様化した生徒たちが入学してくる高校では、特にこの問題についていっそうの研究と努力を積み重ね生徒一人一人の豊かな能力を育てなければならない。

 

二、本校商業科における習熟度別講座編成についての基本的な考え方

 

昭和五十年度、本校商業科に入学してくる生徒たちの計算実務の授業を従来実施してきた方法で行うべきか否かについて研究会が持たれた。その結果、従来実施してきた授業展開の方法では、生徒が満足した状態で授業に参加することができないのではないかという結論に達した。

この授業に満足しない状態は、単に学力の不足という問題にとどまらず、自信や意欲の喪失という人間形成の基本的問題にまで関係してくる。

生徒たちはざ折感や不安感、劣等感をますます深め、学校教育に対する基本的な信頼や期待を失い、その結果として怠学や非行という不適応現象を生み出しているのではないか。

そこで従来まで実施して来た指導方法(基礎的な能力、適性などの点で差異を持つ生徒たちに対して、全く同一条件で指導する方法)を改善し、学校生活に対する動機づけを行う。

1) 生徒一人一人の能力、適性に応じ、また、先行学習の量や学習達成状況に応じて指導方法をくふう改善する。

2) 集中的に取り組むべき学習課題群を設定して指導する。

3) 学習に割り当てる総時間数について研究する。

4) 指導方法や学習方法についてくふう改善する。

5) すべての生徒が「ある一定水準」以上の学力を形成できるように努力させる。

 

三、計算実務、簿記会計1の習熟度に応じた講座編成

 

(一) 計算実務の進め方

商業科二クラスを習熟の程度に応じて、三つのグループに分割し、講座を開設した。(昭和五十年四月)

1) 習熟度別講座編成の方法

 

A段階グループ(既習知識や計算技能の高いグループ)

 

B段階グループ(既習知識や計算技能の低いグループ)

 

C段階グループ(既習知識の全くないグループ)

 

2) 指導期間一か年(ただし、第二学期末において、校内検定試験を実施し習熟度別指導方法の成果を分析、検討す。)

3) B及びC段階グループの生徒たちが校内検定能力四級に合格すれば、上級段階に進むことを許可する。

4) 成果の分析と結果

校内検定試験の結果、全生徒の八十パーセントが能力四級以上の実力を有し、残り二十パーセントの生徒が五級、六級の段階までに到達した。昭和五十年第二学期末商業科の研究会で、この指導方法について成功の評価が得られ、この方法を継続して実施することに決定した。

 

 

 


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