教育福島0046号(1979年(S54)11月)-031page
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(二) 簿記会計1の進め方
1) 計算実務の方法を土台にして昭和五十一年度より、簿記会計1の学習指導に生徒の習熟度に基づく講座編成、および指導方法を採用した。講座編成については2)のとおりである。
2) 講座編成の方法
A講座(簿記会計1の基本をマスターし、かつ記帳例題2を完全に終了した生徒たち)
B講座(簿記会計1の基本をマスターできず、記帳例題2までを理解できなかった生徒たち)
四、簿記会計1の指導に関する検討事項
(一) 第二十七回全商簿記実務検定試験の成績を基礎にしたスケーログラムの作成
(二) スケーログラムの分析と簿記会計1の指導法についての検討
テストの結果を分析する場合、クラスの平均点や標準偏差などを用いるだけでは学級や個人の学力をじゅうぶんに知ることができない。そこで、スケーログラムを用いた場合
1) 誰がどんな問題で誤っているか、正答や誤答の数や傾向はどうかが調査できる。このことは分析結果から個人指導の手がかりを得ることができる。
2) クラス全体で、どんな問題がよくでき、どんな問題がよくできなかったかがわかる。このことはクラス全体を指導する方針を確立するうえで大変役に立つ。
3) 表の得点模様に不安定なばらつきが見られないか。このことは再指導を行う上でたいへん参考になる。
4) このように教材の精選や科目の指導方法、クラス全体の指導方針など重要な手がかりを得る手段としてスケーログラムを作成し分析することが、従来の指導方法を改善する出発点になる。
五、簿記会計1の指導方法についての改善
(一) 簿記会計1の学習サイクル作成
学習サイクルは基礎的な学習目標から高度なものとし第一サイクルから第五サイクルまでとした。
(二) 簿記会計1のマスタープラン作成
マスタープランは基本事項、生徒の作業、到達事項、指導上の留意点、時間配分からなる指導案で、特に到達事項はどのような生徒でも最低到達しなければならない項目を示している。
1) マスタープランによる授業の実施(二講座同時展開)
2) 評価テストの作成と実施
3) 評価テストの成績を基礎としたスケーログラムの作成と分析
六、分析結果に基づいた指導方法の改善
(一) 改善についての注意すべき留意事項
まず指導方法の改善に当たって、次のことに注目しなければならない。
現実に生じている学習の習熟度の差異は、一人の生徒が必要とし いた学習時間に対して、その生徒が実際にどの程度の学習時間を消費したかによって決定される。このことは学習の習熟の度合を関数関係として測定ができることを示している。そこで学習に必要な時間を構成する変数として
1) 課題への適性はどうか
2) 授業の質はどうか
3) 授業の理解力はどうか
以上の三つの度数は分母を構成し、いずれも、高ければ高いほど必要な学習時間が少なくてすむことになる。次に分子を構成する度数、すなわち、実際の学習時間を構成するものとして
(ア) 学習総時間数
(イ) 学習継続力(学習意欲、根気)など二つの変数をあげることができる。
七、指導の留意事項と教育活動
以上述べた五つの変数のうち2)と(ア)は教師側の教材研究の変数であり、残りの1)3)(イ)はいずれも生徒側の変数である。特に2)授業の質を向上させるためには、授業および教材の組織化が次のように準備されていることを確認しなければならない。
1)何をどのように学習するのか、生徒に理解させることができる。
2)教材を具体的な形で示すことができる。
3)個々の学習段階が、次の学習段階の準備となるように、くふうされ、体系化されている。
4)個々の生徒の要求に適合するように教材が調整されている。
次に(ア)学習総時間数については、学習課題を精選し、基本的課題についてじゅうぶん時間をかけて学習させるととともに、補習や宿題などで学習時間を確保し、できるだけ学習に参加する機会を多くし、生徒の適性に応じた個別指導にじゅうぶん時間をかけて指導した。また(イ)については、学習に参加する生徒の学習意欲や根気などを向上させるため、課題提示の方法にくふうを凝らし、できるだけ正答率の高いものから低いものという手順を繰り返すことによって、生徒の学習継続力を確保した。また、3)の授業の理解力、すなわち、学び方の技能の育成については、具体的には手探りの状態である。
以上述べてきたように、授業についての研究が成功するか否かは、教師の努力と生徒の根気以外にはない。現在、研究の成果を生かしての効果的な授業が展開されつつあることを報告して結びとする。
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