教育福島0047号(1979年(S54)12月)-027page
南湖公園をはじめ、市内の文化財を見学し、有意義な研修であった。講習会の内容は次のとおりである。
○講義及び講師
「天然記念物の樹勢回復について」
福島県林業試験場育林部長 千村俊夫
「開発と埋蔵文化財の保護について」
国学院大学助教授 小林達夫
「工芸技術調査の方法と問題点」
文化庁無形文化民俗文化課教官 大滝幹夫
○分科会事例発表者
「古文書調査の方法と問題点」
財福島県文化センター歴史資料課長 誉田 宏
「開発側との事前協議について」
郡山市教育委員会主事 佐藤満夫
○現地研修
白河城跡と感忠銘碑−白河関跡−南湖公園−小峰寺厨子
四、工芸技術・文化財保存技術の調査
今年度の調査は、文化庁が行う「市町村指定無形文化財の実態調査」及び「伝統的工芸技術の調査」に加えて、県単独事業の「保存技術」の調査を行うものである。
工芸技術とほ各地域に伝承される伝統的な工芸品、日用雑貨、玩具類を製作する技術、及びそれらの製作に欠くことのできない原材料、工(用)具を調製、加工する技術等をさし、文化財保存技術とは有形文化財、無形文化財民俗文化財、及び記念物等の保存のために必要な材料の製作、修理修復等の技術、技能をさすものである。今回の調査はこれらの技術の実態を調査し、その保護、育成を図るための基礎資料を得ようとするものである。
五、文化財読本・文化財読本指導の手引きの改訂発行
文化財読本は発行以来約十年を経過したが、その間新たに指定された文化財も多く、また昭和五十年の文化財保護法の改正等によって、改訂を求める声が聞かれるようになった。
本年度は、新しく指定された文化財を加え、文化財保護法の改正の結果も踏まえて、文化財読本の一部改訂を行うことにした。
また文化財指導の手引きについては昭和五十五年から五十七年にかけて、小学校、中学校、高等学校において新しい学習指導要領が施行されることになっているので、執筆を現場の先生に依頼し、全面的書きかえ、改訂をすることにしている。
新しい文化財読本及び文化財読本指導の手引きは、・昭和五十五年度に印刷発行し、県下各学校、各公民館、図書館等に配布する予定である。
六、民俗文化財調査
この調査は最近の社会構造の変移によって、伝統的な生活様式や風俗慣習が急変し、有形・無形の民俗文化財が急速に失われつつあるので、全県の実態を調査し、保護対策の基礎資料とするものである。
本年は昨年に続いて、五十か所の調査を実施し、約六十項目の分布図を作成する。
七、民謡調査
近年、生活様式が急変したため、生活とともにあった民謡は衰微の一途をたどり、あるものは歌謡調に変容している。
そのため文化庁では、今年度より各県ごとに二年継続で、順次全国的な調査を実施することになり、今年は本県など十県が補助を受けることになった。
調査の対象とする民謡は、労作や年中行事など、あとから生活に根ざして歌われてきたものに限っている。
調査は学識経験者十一名の調査委員の指導のもとに九十八名の調査員によって進めている。本年度は六百曲を発掘し、内四百曲を収録予定としているが、十月末日現在六十市町村で五百九十二曲を収集でき、予想以上の成果をあげることができた。今年度末までに
今年度末までに、NHKの協力を得て収録作業を進め、来年度は補足調査を報告書の刊行を予定している。
八、第二十九回福島県民俗芸能大会
県内こ継承されている民俗芸能のうち、価値の高いものを公開し、民俗芸能に対する一般の理解と認識を深めるとともに、記録保存を図るため、毎年県内もちまわりで開催しているが、本年度は県教育委員会、相馬市、相馬市教育委員会、相馬市民会館、福島畏友新聞社の主催で、十一月十一日に相馬市民会館で開催された。
出演団体は次の七団体である。
(1)磯部の神楽(相馬市)
(2)梁取の早乙女踊(只見町)
(3)渡瀬のささら(鮫川村)
(4)安佐野の万歳(郡山市)
(5)上川崎八幡神社の太々神楽(安達町)
(6)大坪の獅子舞(相馬市)
(7)塩崎の手踊(鹿島町)
観客は心ゆくまで観賞し、盛会のうちに終了した。
九、埋蔵文化財保護調査の現況
現在、周知されている埋蔵文化財の包蔵地は全国で三十万か所といわれており、その数は、年々新規発見により増加しつつある。本県においては、現在約六千か所の包蔵地が周知され、開発に伴う分布調査等により、さらに、その数も急増の傾向にある。
そして、これらの埋蔵文化財包蔵地は、昭和四十年代からの高度経済成長を背景に、開発を起因とした発掘調査等の激増により実相が明らかにされ、地域史を構成する資料のひとつとして