教育福島0047号(1979年(S54)12月)-028page

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その保護が強く叫ばれてきた。

このような情況下にあって、県教育委員会では、工場用地造成、道路建設、農用地開発事業等の開発行為から埋蔵文化財包蔵地を守ろうと県下の埋蔵文化財包蔵地を表示した遺跡分布地図や所在、立地、種別等を記載した遺跡台帳を作成し、開発側起業者と事前に協議ならびに調整を行っている。それでも結果として、発掘調査を事前に実施し、記録保存をする事例が増加している。

現在、全国各地で実施されている発掘調査はその動機によって、学術調査と緊急調査に区分される。学術調査は、学問上の問題解決を意図し、学術資料を得るため、調査者が目的に応じて、埋蔵文化財包蔵地を選択し、最新の方法で期間等に拘束されずに調査する。それに対し、緊急発掘は、開発等を起因にし、事業施行前に、開発行為により破壊される範囲に限り調査を実施し記録保存の措置をとり、将来の学術研究の一助にすることを目的としている。しかし、工事期日との関係から種々制約があり問題が多い。全国の発掘調査の九十八・五パーセントは、この緊急調査であり、本県の場合も同様な傾向である。

県内における本年度の発掘調査は、十月現在三十八件を数え、その内訳は学術調査四件、緊急調査三十四件であり、とくに緊急調査の原因別内訳は次のとおりである。

農業開発(国営、県営) 十三件

農業開発(個人) 一件

道路建設 七件

工場用地造成 一件

土砂採取 一件

区画整理 二件

宅地造成 四件

ダム建設 二件

その他 三件

また、開発側との事前協議資料作成をねらいとした分布調査(試掘調査)もすでに十四件が実施されて、文化財保護法による届け出等件数は五十二件になっている。今後も増加することが予想され、昨年度に近い数字になるものと思われる。

 

表9 年度別発掘届等件数

表9 年度別発掘届等件数

 

(一) 主要発掘調査

 

(1) 伊達西部条理遺構ほか(国見町所在、県教育委員会調査)

 

県営ほ場整備地内に存する条里遺構の第五次調査と金谷館跡、阿津賀志山防塁二重掘の調査である。条里遺構については条里制施行時の遺構と決定づける資料を欠くが水路、畦畔等が検出されている。また二重堀については、「吾妻鏡」にいう「口五丈」の記述とほぼ一致する土塁、堀跡が検出され、所により、一重の個所も見られ、注目される。金谷館については調査中であるが、掘立柱建物跡が検出されており調査の進展と期待がよせられている。

 

国見町二重堀発掘風景

国見町二重堀発掘風景

 

(2) 関和久遺跡(泉崎村所在、県教育委員会調査)

 

白河郡衙跡に比定され、全国から注目されて、史跡指定のための発掘調査を進め、本年度第八次調査を迎えた。本年度は、北半に検出された柵列を中心とした建物跡の性格をたしかめ、現在までに確認されている建物跡等の対比により、なおいっそう郡衙の様相を明らかにする予定である。

 

(3) 源平A・C遺跡(石川町所在、福島県文化センター調査)

 

国営総合農地開発事業母畑地区内に存する。A遺跡は農地造成により、その大半を失い、今回の調査では土師器を伴う竪穴住居跡一軒を検出した。出土遺物から平安時代の所産と考えられる。C遺跡は遺構は検出されず、縄文式土器(縄文早期・前期)、弥生式土器(中期)が発見されており、とくに縄文式土器のなかに、縄文早期の日計型押型文土器が含まれ注目される。

 

(4) 下小山田古墳群(須賀川市所在、福島県文化センター調査)

 

円墳二基。両墳とも内部構造は、割石を利用した横穴式石室で、一号墳は盗掘をうけ、破壊されていた。一号墳石室床面上から鉄鋏、刀子が発見された。二号墳は、直径十四メートル。石室は全長五メートル。無袖式で、礫敷の床面から、直刀、鉄鋏が検出された。

両墳とも、七世紀の築造であろう。

 

 

 


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