教育福島0047号(1979年(S54)12月)-029page
(5) 西原遺跡(東村所在、福島県文化センター調査)
母畑地区内に存し、現在まで竪穴住居跡十二軒、掘立柱建物跡十棟、土坑十四基、溝三条が検出されている。竪穴住居跡の時期は六世紀初頭、掘立柱建物跡は二間×二間、二間×三間、三間×三間等の規模を示し、平安時代前期と推定される。遺物では、竪穴住居跡床面から発見された盤形漆器が注目される。
(6) 谷地前C遺跡(東村所在、福島県文化センター調査)
母畑地区内に存し、竪穴住居跡十軒掘立柱建物跡十一棟、土坑六基が検出されている。時期は、平安時代前期と考えられ、前年度の調査結果とあわせ矢武川沿岸の集落構成を検討するうえで、貴重な資料となるであろう。また発掘区の東半部から旧石器片が検出されており、層位的な究明が期待される。
東村谷地前C遺跡発掘風景
(7) 天神原遺跡(楢葉町所在、天神原遺跡調査団調査)
スポーツ公園整備事業に伴う事前調査で、土器棺二十四基、土坑墓四十七基を検出し、土坑基のりち二基から硬玉系の乳淡緑色をした勾玉が六十四個出土し、その形状から、朝鮮半島渡来品の可能性も予想され、注目される。調査の結果から本遺跡は、東日本有数の弥生時代中期、後葉の集団墓跡(再葬墓)であることが証明され、現在、関係者らによって、保存保護策が講じられている。
楢葉町天神原遺跡の墓跡群
(8) 北延命寺古墳(長沼町所在、長沼町教育委員会調査)
県営ほ場整備に伴う事前調査。周溝を有する直径二十二メートルの円墳で封土は耕作により失われ、内部主体を中心とした調査であった。内部主体は横穴式石室で、その形態はT字型を示し、毛野地方に類例が見られる。遺物は、管玉、ガラス製小玉、鉄片、土師器等で七世紀の特徴を有し、墳墓の造営期を示している。
長沼町北延命寺古墳の石室
(9) いかづち古墳群(須賀川市所在、須賀川市教育委員会調査)
宅地造成に伴う事前調査。前方後円墳一基を含む古墳群で、九基について調査を実施した。前方後円墳は、主軸長約三十五メートルを計り、立地、形態から古式古墳の様相を示していたが内部主体がはっきりせず、また出土遺物もなく時期を決定しがたい。
付近に立地する円墳は、内部主体が木棺直葬と考えられ、遺物も古式土師器の特徴を有することから、五世紀初頭に位置づけされる。本調査で注目されるのは、墳丘下から発見された方形周溝墓で二基検出され、うち一基の内部主体から鉄剣、ガラス製小玉が発見された。
方形周溝墓は、本県初の発見で、その意義は大きく、伝播経路等究明すべき課題が多い。
須賀川市で発見された方形周溝墓