教育福島0047号(1979年(S54)12月)-030page

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(10) 愛谷遺跡(いわき市所在、いわき市教育文化事業団調査)

工業団地造成に伴う事前調査。昨年度からの継続調査である。現在までの調査の結果、縄文時代から弥生、古墳、奈良、平安時代を経て室町時代まで連綿と続く遺跡で、多くの遺構や遺物が検出されている。とくにいわき地方で初めて複式炉が検出され、また六十万個をこえる遺物が発見されており、本県では例のない大規模発掘で今後の調査の進展に期待したい。

以上、主要な発掘調査を紹介したが他に郡山台遺跡一二本松教育委員会一郡山五番遺跡(双葉町教育委員会)等郡衛推定地の発掘調査も郡衙跡を裏付けるような資料が検出され注目される。また、三貫地遺跡(新地町教育委員会)北海老古窯跡群一鹿島町教育委員会)等の調査でも多くの貴重な資料が発見され、地域史の見直しが行われている。

 

いわき市愛谷遺跡の複式炉

いわき市愛谷遺跡の複式炉

 

(二) 調査態勢と保護策

 

年々急増する緊急発掘調査に対応し、調査体制の増強充実が叫ばれているが、本県では、財団法人福島県文化センター遺跡調査課の充実に努め、本年度財団職員七名を採用し、さらに嘱託一名を加え総勢十五名と文化課遺跡班四名、遺跡班直属の嘱託三名の計二十二名によって埋蔵文化財と保護と発掘調査に従事している。また一方、市町村では、いわき市が財団法人教育文化事業団に三名の財団職員を採用し、計六名を有し、市内の埋蔵文化財の保護と調査に従事している。 このほか六市に専門職員が配置され、自主発掘を実施しているが、残る八十三市町村では、専門職員も不在で、発掘調査に直面し発掘担当者や調査員の確保に苦労している。ほ場整備、その他予想される開発に対応するため自主発掘できる体制の樹立を期待したい。

近年、高度経済成長期における物質重点主義への反省から、少しずつではあるが、文化財を認識する傾向が生まれてきている。文化財をたいせつにしないことは、その国の歴史をたいせつにしないことである。歴史を忘れ、たいせつにしない民族は亡びるとまでいわれている。文化財の保護は特定の人々、行政だけではできない。多くの県民が、身近な文化財を見直し、みずから関心をもたなければなら、ない。みんなで守りたい先人の遺産である。

埋蔵文化財は実態的に土中にあり、また、土地に密着し、私有権とのかかわりで多くの問題を提起しているが、国民一人一人が文化財のもつ意義を理解し、その保護について真剣に考えることによって、提起されている多くの問題も、さまざまな解決策と英知を生み、現代生活の中で生かされるのではないかと考える。

 

東村佐平林遺跡の現地説明会

東村佐平林遺跡の現地説明会

 

(三) 埋蔵文化財調査の手続

 

埋蔵文化財を発掘する場合には、学術調査、緊急調査のいずれも発掘の六十日前までに、県教育委員会を経由して文化庁に届け出ることが義務づけられている。

したがって、みだりに個人が発掘したり、また、周知の埋蔵文化財包蔵地の所在する場所での土木工事は無届けではできない。次に発掘調査によって遺物が発見された時は、発見者は、遺失物法によって所轄警察署に届け出ることになっている。

埋蔵文化財は、国の財産であるからである。発掘によらないで、遺物を発見した場合も同様な手続きが必要である。

 

 

 


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