教育福島0047号(1979年(S54)12月)-031page

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高校生の生徒指導と問題について

 

高等学校教育課

 

近年、高校生の生徒指導上の問題として、非行の集団化・遊び型化が見られ、一方では学業からの逃避、無気力無関心・無責任化の傾向、さらには家出や薬物乱用、性非行、交通事故など学校・家庭・地域社会が避けて通るわけにいかない問題が見られる。

これらの問題の背景には、高校進学率の飛躍的上昇に伴う生徒の能力・意識・行動様式の多様化、年少者はもちろん大人も含めた価値観の混迷、家庭の教育機能の低下、地域の連帯意識・帰属意識の希薄化、俗悪情報や商業娯楽のはんらん、物の豊かさや甘やかしの風潮に由来する耐性の欠如、受験競争の激化等、数限りなくあげられている。

これらの要因のいくつかが複合して問題行動を誘発しているという指摘は決して間違ってはいないが、教師がなににも増して重視しなければならないのは、基礎学力が低く、学習の習慣がついていない生徒、学校生活に興味が持てず、不良交遊・怠学等の結果、逸脱していく生徒、向上心が見られず、半ば惰性的に日を送っているような生徒と、非行や学業からの逃避とのかかわり合いではなかろうか。

「授業についていけない」「授業がわからない」「学校がおもしろくない」という悩みを訴える生徒の増加と非行や逃避の増加は深いかかわりを持っていると考えねばなるまい。

次に示す昭和五十三年度の高校中途退学者の実態を見ても、このことはうなずけると思う。

表1の全日制の場合、学業不振と素行不良を合わせると中途退学者総数の約四十七パーセントに当たっている。また、その他の理由の中には進路変更が多く含まれており、出願時の進路選定が適切でなかった者のあることを意味している。このことからも中学校の進路指導の重要性が再認識されなければなるまい。

非行を未然に防ぎ、学校生活からの脱落を防止し、一人一人の生徒に高校生活をとおして、将来において自己を正しく生かす能力を身につけさせるには、教師が新学習指導要領の趣旨及び内容をじゅうぶん理解した上で、1)高校進学率九十一・五パーセントの現実を直視し、大幅に発想の転換を図ること2)創意を生かして「魅力ある学校づくり」「特色ある学校づくり」に努めること3)教師と生徒との人間的ふれ合いをたいせつにすること4)中・高校間の密接な連携を図ることを目指す必要がある。

そして、このような目標にアプローチするには、まず学習指導の面では、1)生徒の多様な能力・適性・進路希望に即応する教育内容の展開1わかる授業の推進−2)評価内規(進級や卒業の条件)の見直しと学習到達度の個別化に対する配慮3)学習指導方法の改善と教師自身の指導力の向上等が必要であろうしまた、生徒指導面では、1)人間的ふれ合いに基づく生徒理解の徹底2)教師の共通理解の促進と校内指導体制の確立3)教育相談の手法を生かした個別指導の充実4)ホームルーム活動を始めとする特別活動の充実と部活動の重視5)家庭との連携の強化と関係諸機関との連絡提携6)保護委員会・PTA等との協力による地域ぐるみの育成活動の推進等が求められるであろう。

いずれにしても、前述の学校におけるじゅうぶんな対応を教職員あげてくふう・実践することが極めてたいせつなことであることは論をまたないが、それとともに家庭及び地域の理解協力が必要であり、これらが有機的関連を強めて機能するときこそ、高校生ひいては、青少年の健全育成が期待できるものと思うのである。

 

昭和53年度県立高等学校中途退学者状況

 

表1 全日制 (理由別・学年別)

表1 全日制 (理由別・学年別)

 

表2 定時制

表2 定時制

 

 

 


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