教育福島0050号(1980年(S55)04月)-031page

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武道の郷 南会津

 

-南会津教育事務所-

 

全国中学校女子剣道大会準優勝、同東北大会・県大会優勝、福島県中体連柔道大会準優勝、柔道スポーツ少年団全会津大会小・中とも優勝、この輝かしい成績は、昭和五十四年度における南会津郡小・中学校児童生徒の柔剣道の歩みの一端である。このような成果は、南会津郡柔剣道の底辺が拡大し、質的な充実を物語るものである。

格技指導の充実発展に努力した指導者層の絶えざる懸命な実践もさることながら、こうした実績の陰の力として各種スポーツ少年団育成会等、地域ぐるみの援助活動や条件整備に努める自治体の熱意を忘れてはならない。

田島町では、昭和五十二年十二月、柔剣道愛好家やその支持団体からの強い要望に応え、二千四百五十万円の本体工事で、三百五十三平方メートルの武道館を建設した。これは、県内の町村段階では、棚倉町に次ぐ二番目の武道館建設ということであった。

この武道館建設を機に、柔剣道のほか、空手・銃剣道クラブも結成され、武道館利用が計画的に進められている。田島中学校柔道部も、昭和五十四年の新校舎落成前は、八百メートル離れたこの武道館で練習に励み、黒帯五名、県大会準優勝の快挙をなし遂げる基礎をつくったものである。

下郷町では、町中央部に、武道専用道場の建設が望まれていたが、たまたま、下郷中学校隣接地の町営山菜加工センター閉鎖により、昭和五十四年十一月、六百五十三万円の工費をかけてこれを改築し、二百二十三平方メートルの武道場が誕生した。

町内武道関係クラブの組織的利用はほとんど夜間に限られるため、昼間利用は下郷中柔剣道部の占有状態で、同中学校第二体育館的存在となった。

最後に伊南村であるが、すでに「日本教育新聞」でも紹介されたとおり、「剣道の里」「剣道民宿」として知られ自然と人情に恵まれた村である。

伊南村は、古来、剣道が盛んで、教育委員会には、江戸時代に作られたという剣道具が飾られ、その伝統を誇っている。

 

誇れる武道館(伊南村営)

 

誇れる武道館(伊南村営)

 

全国から多くの剣客が訪れ、村民相手に腕を磨いたという歴史にちなんで、村では、三年前から「剣道民宿」を観光面で取り上げたことにより全国各地から愛好者の訪問があり、剣道の技を競い合っているという。

そこで問題になったのが、小・中学校体育館では、学校自体の部活動だけでもまかない切れないのに、民宿訪問者の「剣道」が割り込む余地はないということであった。

その問題解決のため、さらには、中学校剣道に独自の練習場を提供し、併せて村民道場設置の要望から、昭和五十四年十二月、九千万円の巨費を投じ面積五百七十平方メートルの純日本風の「村営武道館」の誕生となったものである。

この武道館は、伊南中学校体育館の隣に建てられ、また、「剣道の里」の伝統を不動のものにするため、昼間利用は中学校優先ということで、他校運動部関係者には、まことにうらやましい限りである。

伊南中学校は、昭和五十四年度から三年間、文部省指定の格技指導推進校として、教科と特別活動の両面から研究実践継続中であるが、このような恵まれた環境において、中学校格技指導を一層拡充、推進するための研究実践には大いなる期待が寄せられている。

中学校のクラブ・部活動の運営では練習場確保の制約が伴っているが、右のような武道館の誕生は、部活動に空間的ゆとりを与え、充実した活動を可能にするもので南会津格技発展に明るい灯をともしたものといえるだろう。

 

 

 


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