教育福島0050号(1980年(S55)04月)-032page

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わたしの研究実践

 

基本的生活習慣育成とことばの指導

 

喜多方市立喜多方養護学校教諭

石山喜美子

 

一、実践の趣旨

 

精神薄弱児は、ほとんどの場合言葉の発達に遅れがあるか言語障害を持っているといわれている。

本児も、精神発達テストの結果からもわかるように生活年齢に比べ全般的に遅滞しており、特に言語面の遅滞は著しい。

そこで、子供の考える能力の実態がどの程度であるかを正しく吟味検討をし、それにふさわしい言語指導のあり方を探求しようと考えた。更に一年以上の学校を離れて(休学による)母の全面介助によって家庭生活を送り退行現象の認められる典型的な過保護の本児に対しては、一体どのような刺激を加えればよいか、どのような指導方法をとれば身辺生活をより確実にすることができるかなどについてその望ましい姿を究明しようとした。

 

二、実践の内容

 

(一)実践の方法と内容

研究推進に当たっては、言語表出が全くなく学習行動に予測のたてにくい本児に対処するために実証的な研究法を考慮しつつも、事例研究法を中心とした体験的な手法を採用するようにした。実態は次のとおりである。

1)言語面・音声言語は大変少なく、パン、アータン、ガッコー、パパ、ワンワン、バイバイなど母音、破裂音、通鼻音の一部による連結に限られる・サイン言語は巧み

2)行動面・はいかい、多動・衣服着脱、たたみ方、ボタンはめ、帽子かがり、ランドセルの背負いかたなどできない・尿、便の失禁・持ち物、場所への異常なこだわり・偏食

3)対人関係・年長児で好きな友達とのみ遊ぶ・きらいな子をさける・順番を守れない

4)情緒面・不満の時は「いや」の連発で友達にいたずらをする。・うれしい時は持ち合わせた音声言語やサイン言語を使用し長時間訴え続ける・母への依存的傾向強く大声で泣く・少しのけが、物の紛失に泣き続ける。

(二)仮説

「基本的生活習慣育成を基盤にして、身辺処理のための行動と言葉とのかかわりあいを重視した指導をする。更に学習行動の遊戯化による生活経験の広がりを図れば、やがて言葉の広がりとなり、子供の内的な言語力を育てることができる。」

(三)具体的な治療教育の方法

1)複数学級内における一対一の指導形態を採用する。

2)基本的日常生活習慣形成と言語指導の関連を強める指導方法を工夫する。

3)指導方針の一貫性を図る上で母親との連絡を密にする。

4)専門医師との連携を重視する。

5)全校一体となり指導に当たる。

(四)指導計画

第一期(五十三年四月〜七月)

指導準備期とし、次の指導目標による。

・行動観察・ラポートづくり・変容の発見

第二期(八月〜五十四年三月)

言語指導準備期とし、次の指導目標による。

・言語的能力の育成・基本的生活習慣の確立・きまりへの関心・協調性の育成・情緒の安定

(五)指導の概要

1)日常の生活指導について

ここでは,「基本的生活習慣育成」と「言葉の指導」とをそれぞれ独立した指導分野としてとらえるのではなく、その両者の関連を考え身辺処理のための体験的な行動が子供の内面を豊かにし言語を育てるという立場を重視して、次の七項目について意図的に実践した。

・言語の指導・登校後ランドセルをおろし、かけるまでの指導

・衣服の着脱・たたみ方の指導

・運動帽子のかぶり方の指導

・給食用白衣のボタンはめの指導

・給食の指導・排泄の指導

2)課題遊びの指導について

ここでは、学習計画の遊戯化をねらい、知的な目標、内容を遊びの世界に再構成しながら意欲的に学習行動に参加させ、生活経験の拡大を図

 

 

 


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