教育福島0050号(1980年(S55)04月)-033page

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ろうとした。このような学習行動の広がりは、やがて言葉の広がりとなり子供の内的な言語力を育てるのに役たつと考え次の実践化を図った。

・名前の指導・天気しらべの指導・なぞり書きの指導・絵の指導・数あそびの指導

3)家庭との連絡を深めるための連絡ノートの作成

これは、学校と家庭それぞれに子供の様子を連絡し合って、相互の理解を深めるとともに一貫した意識のもとに子供の指導に当るたためのものである。

(六)変容と考察

1)日常観察による変容

ア、身辺生活の自立について

ア)衣服の着脱、たたみかたは、「言葉かけ」によってできるようになった。

イ)直経二センチメートルのぐらいボタンははめられるようになった。

ウ)ゴムヒモのある帽子を一人でかぶれるようになった。

エ)ランドセルの金具のとりはずしや、所定の場所にかけることができるようになった。

オ)偏食はよほど矯正され、少しかたいものでもかめるようになった。

カ)必要に応じ便所に行き、排尿できるようになった。

イ、言語面について

ア)語い並びに音声面の改善がみられた。入学当初、四つの語いだけ認知できたが、一月九日現在では二十九の語いを使うようになった。

イ)場面や状況に応じ、サイン言語と一緒に使用できるようになった。

ウ)サイン言語に質的変化が認められる。つまり、サイン言語は減少するところまではいたっていないが、従来言語の肩代わりとして使用していたサイン言語を、パロール(意志伝達のための言語)成立の補助手段として使用するようになった。

エ)表出活動の強化は、受容活動の強化という面でも望ましい方向に表れている。

ウ、学習状況(知的興味関心)について

ア)「ほしたかお(仮)」が自分の名前とわかり「たかお」が読める程度に書けるようになった。

イ)なぞり書きの際、従来点だけの表記に終始したが、地の点線に関心を示すようになり線が少し続くようになった。

ウ)はれ、くもり、あめなどの天気のしるしに根気よく着色できるようになった。

エ)絵の表現は幼稚であるが、感情を自由に表現できるようになった。

2)諸検査による変容

ア発達検査による変容

精研式CLACI-2 によれば、検査2は検査1に比べ、サイコグラムにふくらみがみられ、全体としての発達状況が望ましい方向に傾いていることがわかる。とりわけ食習慣、起居(着衣)、対人関係、表現活動などについてはその傾向がはっきりと表れ、指導方法がまちがっていなかったことを示しているように思われる。

イ、学習困難度調査による変容

Teacher Rating Scale(C.KConners)の調査2の数値四十一は、調査1の数値五十九より少なくなっており、学習困難要因が徐々にではあるが除去されつつあることを表しているようである。

しかし、その変容で明白でないのは、その要因が複雑に交錯しており、さらに細分化された検査が必要であることを物語っているように思われる。

3)教師側の変容

ア、主題に取り組んだことによって障害児の教育に関する意識が高まり、各種の研究実践の熟読の大切さがわかった。

イ、治療教育においては、特に子供が登校してから下校するまですべてが教育であることの意識が高まり、遊びを通しての「身体的な触れ合い」の重要性を強く感じ指導に当たるようになった。

ウ、日常の生活指導の一つ一つに対し、言葉の指導とのかかわりあいを考慮した計画を立てて指導に取り組むようになり、指導中も指導後も常に反省の上に立ち指導に慎重さが加わってきた。

エ、指導を進めるに当たり子供の能力にやや上回る課題を与えてそれをのり越えさせるようにした。すなわち、適度抵抗の原理に立ち指導を発展させるために、子供の能力・適性を十分知ろうとするようになった。

オ、子供の持てる能力を十分に発揮できるような手だてを常に考え教材、教具、資料の工夫に努めるようになった。

力、児童観察の方法として表情や要求の動き、高さをみることに慣れ、記録を累積するようになってから子供の変容をとらえることに敏感になり、授業を進めながら個々の評価にも気を配ることがおっくうでなくなった。

キ、家庭連絡簿は家庭生活のようすや子供の能力を知るのに重要でありフルに活用するようになった。

ク、音声言語を身につけさせるためには毎日の集団生活の中での楽しい遊び学習による生活経験の広がりが大切であることや、音声言語指導の自己研修の必要性も強く感じるようになった。

 

 

 


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